以前、当連載で「娘と話したいのに話せない…」という「団欒のない家族」の話を取り上げたことがあったが、その回は、35万アクセスを超える大きな反響があった。

 長年、引きこもり問題を取材してきて、とくに最近感じるのは、地域の中で家族が孤立し、その家族の間でも話ができないなど、コミュニケーション自体が崩壊していることである。

 個々が社会とつながることのできない世界。その孤立した関係の中で、身近な存在であるはずの家族がそれぞれどこに出かけるのか。何をしているのかさえもわからない。

 高年齢化する引きこもり問題の背景には、雇用環境の悪化、家族関係の崩壊、進む貧困化の一方で、こうして社会に戻れなくなった人たちに対するセーフティーネットが何もないという現実がある。しかし、政府は引きこもり問題に目を背け続け、すでに年金生活者となった親だけが、年老いてゆく。

 この構図は、“消えた高齢者”の問題にも、リンクしている。

 そんな、ある家庭の中での光景――。

 ドアの下の隙間から、そっと娘が差し出した便箋には、こう書かれていた。

「お菓子、買ってきて…」

 それを見た母親は、1時間後、お菓子を詰めたスーパー袋をドアのノブにかけた。しかし、中に入っていたのは、ドロップや豆菓子ばかりで…。

深刻な状況もほのぼのさせる?
「引きこもり」を漫画にした女性たち

 実はこれ、元当事者の山口真由美さん(43歳)が、自分自身の経験を基に原案を考え、イラストレーターのこだまことみさんに漫画を依頼。独自のキャラクターを生みだして、協同制作した4コマ漫画のストーリーだ。