2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は花王、資生堂、ユニ・チャームの「生活用品」業界3社について解説する。(ダイヤモンド・ライフ編集部 松野友美)
花王は純利益「2.1倍」
資生堂は純利益「96.3%減」
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の「生活用品」業界3社。対象期間は2024年7~9月の第3四半期としている(3社いずれも24年12月期決算)。
各社の増収率は以下の通りだった。
・花王
増収率:3.8%(四半期の売上高4020億円)
・資生堂
増収率:-6.1%(四半期の売上高2142億円)
・ユニ・チャーム
増収率:0.4%(四半期の売上高2343億円)
生活用品業界の3社は、12月期決算だ。最終四半期(10〜12月)を残す第3四半期では、前年同期比では資生堂のみが減収、前四半期比では3社とも減収となった。ただし、24年1~9月期の3四半期累計の業績においては、前年同期比で増収だった。とはいえ、資生堂の増収額は3億3700万円と“辛くも増収”という苦しい状況にあることは変わらない。
24年1~9月期の利益面(3四半期累計)も見てみよう。
花王はコア営業利益(※)が708億円(前年同期比42.8%増)、営業利益が前年同期比99.3%増(2倍弱)の1011億円、純利益が同118.3%増(約2.1倍)の710億円に拡大した。
資生堂はコア営業利益274億円(前年同期比25.6%減)、営業利益22億円(前年同期比91.5%減)、純利益は7億5000万円(前年同期比96.3%減)と前年同期を下回る数字が並んだ。3カ月前の第2四半期の純利益は1500万円で「前年同期比99.9%減」という衝撃の数字だったところからわずかに盛り返しているものの、依然厳しい水準だ。
ユニ・チャームはコア営業利益が前年同期比11.7%増の1036億円、純利益が同2.4%減の596億円に縮小した。
3社の中で、資生堂の不振ぶりは目立つ。
花王と資生堂は日本を代表する生活用品や化粧品を扱う企業だが、2社の決算には大きな差が付いている。花王の好調要因と併せて、各社の状況を次ページ以降で詳しく解説する。