過去最高値に挑戦する米国株式市場
先週金曜の雇用統計は良い数字だった
米国株が過去最高値に挑戦する展開になっています。下のチャートは米国を代表するS&P500指数です。先週金曜日の引け値は2129.90で、これは2015年5月に付けたザラバ高値2134.72に、あと0.2%です。
この水準は、過去14か月に渡って上値抵抗線となっていた水準であり、ここをブレイクアウトすることが出来れば上値は軽くなることが予想されます。
今般の上昇局面では、相場について行けなかった機関投資家も多く、その関係で、ブレイクアウトしたら慌てた買い物が入ることも予想されます。
先週金曜日、米国株が上昇した理由は、非農業部門雇用者数がコンセンサス予想17万5000人に対し28.7万人と強かったことによります。
平均時給は2セントの上昇でした。
失業率は4.9%でした。
5月の非農業部門雇用者数が極めて低かったので、米国経済の鈍化を懸念する声が一部から上がっていましたが、今回の雇用統計は、それが杞憂だったことを証明しました。
過去最低水準の米国債が買われる理由
現在のS&P500は割安? 割高?
ところで、金曜日のマーケットで「あれっ?」と思わせたのは、債券が買われた(=利回りは低下)ことです。
今回の非農業部門雇用者数のように、景気が強いことを示す指標が出れば、普通、債券は売られます。しかし金曜日、債券は買われました。米国10年債の利回りは1.361%と過去最低の水準に来ています。
これは日本や欧州がマイナス金利になる中で、少しでも有利な利回りを求めて世界の投資資金が米国債に集まって来ていることによります。
さて、ここで米国株式市場のバリュエーション(株価の割安度)について考えてみたいと思います。まず2015年のS&P500の利益は117.98でした。
すると現在、S&P500指数は2015年の実績EPSに対し株価収益率18.05倍(計算は2129.90÷117.98)で取引されていることになります。
過去10年間の平均が16倍だったことを考えると、現在の米国株市場は割高と言えるでしょう。
しかし上で見たように、債券利回りが極端に低くなっているので、市中金利と競争関係にある株式にはフォローの風が吹いており、少々のオーバー・バリュエーションは許せる状況だと論ずることもできるかと思います。
決算発表シーズンがスタート
ハイテクの収益が新しい懸念材料
今週から米国は決算発表シーズンに入ります。このところ米国の四半期企業収益は前年比マイナスが続いており、しかもトレンドは悪化の一途を辿っていました。
今回、その悪化トレンドに終止符が打てるかどうかが注目されています。
2014年下半期以降、S&P500利益がボロボロだった主な理由は、石油、素材の企業の決算が、コモディティ価格の下落で悪化したことによります。
しかしながら今年の第1四半期から第2四半期にかけては、それらのセクターに加えて、新たにハイテクの業績の下方修正が顕著になっています。
これはアップル(ティッカーシンボル:AAPL)のコンセンサス予想(6月期は1.39ドル)に下方修正が入ったことが原因です。
アップルの場合、部品メーカーへの波及効果も大きいので、その業績見通しからは目が離せません。
米国のハイテク企業は、売上高に占める海外比率(59%)が全業種中最も高く、英国のEU離脱国民投票に起因する、ポンド安、ユーロ安、そして人民元安の影響を受けやすいのです。
したがって決算発表シーズンの投資戦略としては、ハイテクを避け、業績の変化率の好転が見込まれる石油、素材、工業、市況株あたりを中心に攻めたいと思っています。
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