「一生に一度のことだもの」
と呪文をつぶやく病気

 資金的に精一杯背伸びして購入したマイホーム。しかし、ゆとりのない資金計画は、後々の夫婦ゲンカの火種になりやすい。前回のコラムで「買いどきは、妻がほしい!といったとき」と書いたが、これも経済的な裏づけがあってのことである。

 マイホーム取得時は、まるでお札に羽がはえたようにバサバサとお金が飛んでいく。多くの場合、その使い手は妻のほう。たとえ、あなたの奥さんがスーパーマーケットの特売品をこまめにチェックしているようなしっかり者であっても、このときばかりは豹変する可能性が高い。

 よく女性が「デザートは別腹よ」というけれど、このときも同じ。日常のサイフと違って、とめどもなくサイフのヒモが緩む「マイホーム買い物症候群」にかかってしまうからだ。

 女性にとって、マイホーム取得は憧れのインテリアを実現する最大のチャンス。「この際だから」とか、「一生に一度のことだもの」という呪文を唱えながら、まだ十分に使えるような家電や家具まで次々に買い替えてしまうのが、この「病気」の特徴である。

 男性は「家を所有した」ことに達成感や満足感を味わうが、女性は違う。今までずっと思い描いていた暮らしが実現して初めてハッピーになるのだ。訪ねてきた友だちに「素敵ね~、羨ましい!」とでも言われれば、満足感は倍増する。

 「さっそく友だちに新居のお披露目もしなくちゃね。それにはあれもこれも……」と目を輝かせている妻に向かって、「お金、ないんだからさ、我慢しろよ」とでも言おうものなら、さっと冷たい空気が流れることは間違いない。

ギリギリ予算では、
ギスギス暮らし

 高橋光太郎・泰子さん夫妻(仮名、夫37歳、妻35歳)もそんな試練の真っ最中だ。結婚以来、賃貸住宅で暮らしていたが、1年前、埼玉県川口市のマンションを3400万円で購入した。光太郎さんの年収は約600万円、泰子さんもパートで約100万円の収入がある。

 マイホームを購入するときの安全圏の目安としては、

1.購入予算は年収の5倍以内
2.ローン返済額は月収の20%以内
3.頭金は分譲価格の2割程度、といわれている。

 高橋家の世帯年収は700万円、物件価格は3400万円だから、第1の条件はクリア。しかし、貯金が少なかったため、頭金を最低限におさえて借入金で賄った。そのため2と3はクリアしていない。

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太田三津子 [不動産ジャーナリスト]

1978年青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年フリーライターとして独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆するかたわら、雑誌や書籍の企画編集、座談会の司会やコーディネーターとしても活躍。共著に『次世代ビルの条件』(鹿島出版会)。日本不動産ジャーナリスト会議会員。


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