混沌のモンゴル巨大炭鉱開発<br />中国と組む三井物産の勝算タバントルゴイ炭鉱の一部で採掘された石炭は現在、トラックで中国に輸出されている
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 モンゴルに眠る世界最大級の炭鉱をめぐり、その権益獲得競争が混沌としてきた。渦中にいるのは、日本の三井物産だ。

 9月中旬、「国際入札は10月に実施する」とのモンゴル政府高官の発言が世界に流れた。その直後、三井物産が石炭生産で世界最大手の中国国有企業・神華集団との提携を発表。共同で国際入札に応札することが明らかとなり、一気に有力候補へと躍り出たのだ。

 入札が行われるのは、モンゴル南部にあるタバントルゴイ炭鉱。埋蔵量は60億トン超で、その3分の1は製鋼原料として世界的な需要拡大が続く原料炭だ。そのため権益をめぐっては、インドの財閥、米国の石炭最大手、ロシアの国営鉄道、ポスコを中心とする韓国企業のコンソーシアムなど、世界の名立たる企業十数社が水面下でつばぜり合いを繰り広げてきた。

 日本勢では早くから伊藤忠商事、丸紅、住友商事、双日の4商社連合が権益奪取に向け、準備を進めてきた。インフラ整備などを絡めた提案を行っているとされる。

 国際入札はしかし、官民が入り乱れる権謀術数の世界。特にロシア、中国は“最強の営業マン”として国家元首まで投入する力の入れようだ。一方でモンゴル側は、政治的に微妙な関係にある中ロの企業が単独で開発に参画することへの警戒心が強く、「第3の隣国」と位置づけられる日本勢が食い込む余地は大きい。

 同炭鉱の総事業費は、数千億~1兆円ともいわれ、モンゴルのGDP(約42億ドル)に匹敵する国家的プロジェクト。眠れる資源大国だったモンゴルではほかにも、大型の資源開発がめじろ押しだ。モンゴル政府はこれを経済成長の柱にする考えだが、実現には海外の技術と資金が必須となる。

 商社勢は、モンゴル側の要望を的確に読み取り、他陣営を上回る支援策を日本政府から引き出せるか。官民連携による“根回し”が勝敗を分ける。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)

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