![ディープシークの衝撃#2](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/650/img_306cba44b56fd91eadc846c0715305d9233642.jpg)
米オープンAIに匹敵する性能の生成AI(人工知能)を開発した中国の新興AI企業のディープシークの登場は、米エヌビディアなど米国のAI企業を中心に株式市場に激震を与えた。では、実際のAI開発の最前線やAI産業の構造にどんな影響を与えるのか。特集『ディープシークの衝撃』の#2では、トヨタ自動車、日立製作所、NTT、三井物産など日本の名だたる大企業と提携するAIスタートアップ、プリファード・ネットワークスの共同創業者・最高研究責任者の岡野原大輔氏を直撃した。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
米国の生成AI業界に属さない
中国企業が与えた本当の衝撃とは?
――ディープシークの登場をどうみますか。AIの研究者にとっては突然現れた企業ではないようですが、AI業界ではどのように評価されていたのでしょうか。
衝撃は3つあると思います。
1つ目はディープシークが低コストで、米オープンAIに匹敵する性能の大規模言語モデル(LLM)を作ることができたということです。
2つ目は、ディープシークが性能を上げた成果を論文で発表していること。オープンAIの先進的なモデルのやり方は非公開で、どうやって性能を出しているのか謎ですが、ディープシークが「こうやったら同じようなことができます」と論文で発表してしまった。それで、世界中のAI開発者がまねをできるようになりました。
3つ目がディープシークという企業が中国企業で、あまり注目されていなかったこと。つまり、アリババやファーウェイという中国の有名企業ではない。以前から技術者にはよく知られたAI企業ではあったのですが、一般からはあまり注目されていなかった企業が、こうした成果を出した。それが驚きで、今回のショックが起きたのだと思います。
――株式市場では、米エヌビディアを筆頭にAI企業の株価が下落する「ディープシーク・ショック」が発生しましたが、実際にAIを開発する企業や産業界にとってもショックだったといえるのでしょうか。
革新的なことが起こったと思います。オープンAIやグーグルなど米国企業のコミュニティーが生成AIの開発をリードして半導体など計算資源も押さえていたところに、ディープシークという資本力もなく、米国のコミュニティーに属さない企業が、いきなり同じようなモデルを作ってしまい、そのノウハウを全部公開してしまったショックがあるのは間違いないでしょう。
――つまり、エヌビディアのGPU(画像処理半導体)を資金力で大量調達する米巨大IT企業が独占していたAI産業の構造が崩れていくと?
その見方はできると思います。
生成AI業界におけるディープシークの台頭は、エヌビディアを中心に世界をリードしてきた米巨大IT企業の支配構造をどのように変えていくのか。それは日本企業のAI開発にどんなインパクトを与えるのか。次ページで岡野原氏が大胆に予測した。