問題企業の会計監査ばかりを引き受ける監査法人が、またぞろ現れ始めている。

 事の発端は昨年9月、上場企業約20社の会計監査を行っていた監査法人ウィングパートナーズが3年弱の歴史に幕を閉じたことだ。

 ウィングといえば、他の監査法人に「監査意見不表明」を突きつけられた上場企業が、最後に泣きつく「駆け込み寺」とも揶揄される監査法人だった。これまでにウィングが監査を引き受けた上場企業25社のうち、半数の12社がすでに上場廃止となっている。

 そんな同監査法人に対し金融庁は昨年7月、不適切な監査があったとして1ヵ月の業務停止処分を下した。これでいよいよ監査を受ける企業も「監査意見が付かず上場廃止に追い込まれる」(業界関係者)と思われた。

 ところが、である。なんと処分の発表時点でウィングの監査を受けていた上場企業13社すべてが新たな監査人を選定。なかでも最多の8社の監査を引き継いだのが、時を同じくして昨年7月に設立されたばかりという監査法人元和だ。

 引き継いだ8社のうち、継続企業の前提に疑義の注記が付された企業は7社に上るというから門戸が広い。だが早くも、ヘラクレス上場のオープンインタフェースが上場廃止となるなど、延命措置が徒労に終わるケースも見られる。

 さらに驚くのは、ジャスダック上場のサハダイヤモンドのように、元和でさえウィングから引き継いだ後に「監査継続が困難である」ことを理由に監査人が辞退した企業の受け皿となる監査人すらも新たに現れたことだ。

 11年連続で赤字を垂れ流すサハはかつて、ロシアのサハ自治区でダイヤモンドを掘ると発表して時価総額を20倍に吊り上げたが、結局ダイヤは出ずじまい。ほかにもジャスダックが発行取りやめを求めたにもかかわらず、最大1万%の希薄化を招く増資まで実施した問題企業だ。2月16日時点の株価はわずか4円にすぎない。

 そして同社の新たな監査人が、よりによって元ウィングの会計士である市島幸三氏と松下俊夫氏。代表社員でもあった市島氏に監査を引き受けた経緯を問うたところ、「公認会計士協会が、上場企業の監査を引き受けるべきかの基準を、大きな考え方で設けており、それに則っている」と不可解な主張。協会に確認したところ、「そんな基準はない」(担当者)という。
 金融庁が監査法人に対する業務停止処分を下したのは“日本初”。それほど重い処分をして結果がこのありさまだから、いたちごっこはまだしばらく終わりそうにない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

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