4月10日に麻生総理が“経済危機対策”を発表しました。国費(財政出動)15.4兆円、総事業規模56.8兆円という過去最大のとてつもない規模の経済対策となりました。この対策で本当に景気浮揚効果があるのか、どう評価すべきかを考えてみたいと思います。
本当に困っているところに
予算が回らない可能性が高い
まず間違いなく言えることとして、今回の経済対策は短期的にはそれなりの景気浮揚効果を発揮するでしょう。公的部門で15兆円もの需要追加を行うのですから、それは当然です。その意味で、こうした大規模な財政出動を決断した“政治の意思”は高く評価されるべきではないでしょうか。
しかし、そうした“政治の意思”が15兆円という総額だけに止まり、残念ながら対策の中身や細部は霞ヶ関の官僚主導となってしまっているように感じざるを得ません。その結果、せっかくの政治決断にも関わらず、対策の中身は90年代の経済対策のような陳腐なものや悪平等的なバラマキのオンパレードになってしまっているのではないでしょうか。
例えば、「成長戦略」という予算項目の中にある「低炭素革命」という項目を見てみると、低燃費車や省エネ製品の普及促進のための購入補助はともかくとして、何故か「レアメタルのリサイクルシステム構築」とか「石油の上流検疫確保への支援」といった、あまり低炭素革命に関係ない予算まで入っています。明らかに官僚の悪乗りと言わざるを得ません。
なぜそうなってしまったのでしょうか。
僅か数週間の間に突然対策の総額が大きく膨らんだことが原因だと思います。実際、霞ヶ関の官僚からは、「個々の予算の金額は、理屈がつく金額にゼロが一つ書き加えられた感じ」、「本予算の数年分のお金が一気にまとめて来ちゃった」といった話が漏れ聞こえてきます。いわば、経済対策が濫発された90年代の“失われた10年”をも超える、「100年に一度の霞ヶ関バブル」が起きているのです。実体経済はもちろん悪いですが、巷で喧伝されているような「100年に一度の危機」とはとても言えないにも関わらず、です。