大きく揺らぐ石破政権の土台、“身内の反乱”で四面楚歌3月5日午後、参院予算委員会で立憲民主党の田名部匡代(手前右)の質問に答弁する首相の石破茂(中央) Photo:JIJI

「負けに不思議の負けなし」。プロ野球の元監督、野村克也がかつて自民党大会で語った名言の一つ。これは選挙にも通用する。「勝利の方程式」があると同時に典型的な「負けパターン」が存在するからだ。その負けパターンには共通する二つのキーワードが浮かび上がる。「おわび」と「ブレ」だ。大きな不祥事や失政があれば選挙はおわびから始めざるを得ない。腰が定まらない政策や方針の「ブレ」は国民の信頼を失う。

 昨年10月の衆院選で自民党が大敗した背景にも、この典型的な負けパターンがあった。旧安倍派の裏金問題でおわびを繰り返し、同時に首相の石破茂の発言がくるくる変わったことが政権の信用失墜に直結した。今また高額療養費制度を巡る石破の度重なる方針転換が自民党を大きく揺さぶる。

 もともと石破は「弱い立場の人や困っている人たちに対して深い思いやりを持つ政治家」(政府高官)として知られ、高額療養費制度による負担限度額の引き上げについても当初は消極的だった。しかし、制度見直しにこだわる財務省や厚生労働省の強い説得で受け入れを渋々決断した経緯があった。石破は国会答弁でこう繰り返した。

「制度の持続可能性と(支払いが増える患者の)受診抑制が起こらないことの両立を図りたい」

 持ち前の高い答弁能力で、石破は衆院での2025年度予算案審議を乗り切ったが、参院予算委に論戦の舞台が移った3月5日、思わぬ落とし穴にはまった。事態を劇的に変えたのは、立憲民主党が参考人として招致した全国がん患者団体連合会理事の発言だった。