「努力できない人」が即バレ!たった21秒のテストが意外に当たってそうで怖い『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第47回は、「努力できない脳」をサボらせない方法について考える。

大学受験に必要なものは…

 勉強習慣が身につかない早瀬菜緒に対して、東大合格請負人・桜木建二は「あいつの脳は努力できない脳だ」と切り捨てる。それを確かめるため、東大専科担任の水野直美は早瀬に奇妙な実験を課すのだった。

 その実験とは、「利き手と逆の手の小指で、21秒間に100回机をタップする」というものだ。もしスペースがあれば皆さんもぜひやってみていただきたい。ちゃんと100回タップできただろうか。

 実はこの実験は、腕や指の柔軟さを測るものではない。「高速に数を数えるという面倒な作業をごまかさずにできるか」を測っているのだ。私も108回か109回タップした気がするが、正直なところ正確な数はわからない。そんな私は、桜木に言わせると「努力できない脳」なのかもしれない。

 私は脳科学に詳しくないので、この実験の妥当性は評価できない。ただ、確かに自分を努力家だと感じたことはあまりない。勉強の計画表は作ったきりで終わることがほとんどだし、部屋の掃除も週1回やっているとは思えない汚さだ。

 やや挑戦的なことをいうと、日本の大学受験は努力量勝負だ。それも、1年や2年ではなく、小中高全てにおける勉強の総量と言っていいだろう。もちろん努力だけが全てではない最上位大学の場合や、個別の家庭の事情などの例外はあるだろうが、基本的には学校と塾のカリキュラムを十二分にこなしていれば大抵の大学は合格できる。

 ただ、私を含め努力ができない人は多い。

 もし本編にあるように「努力できる・できない」が先天的に決まっているのであれば、努力できない人はどうすればいいのだろうか。

「どうせサボるから」と期待しない生き方

漫画ドラゴン桜2 6巻P159『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 ありきたりかもしれないが、私は「どうせサボる精神」を重視していた。「自分はどうせサボるから」と思い込み、将来の自分に期待しない。例えば、私が通っていた塾は対面とオンラインの両方があったのだが、「オンラインは絶対にサボる」と思ってあえて往復3時間の通塾を選んだ。

 他にも、スマホを持っていたらどうしてもいじってしまう。なので、ボロボロになっていたのをこれ幸いとばかりに、あえて学校のロッカーに入れ、充電をほとんど0%にしていた。面倒くさいので充電コードなんて学校に持っていかないのである。

 私にとって、自発的に「勉強をしよう」と思うためには、最低でもYouTubeを1時間、インスタのリールを1時間眺め、計2時間の助走が必要だ。自分のやる気は信用できない。であれば、「勉強する前段階」である、「強制的に勉強しなければいけない環境」をあの手この手を使って生み出すほかなかったのだ。

 そして何より、物理的な移動やスマホの封じ方といったことを考えるのは楽しい。英単語や日本史の一問一答のような反復学習とは一線を画す。「どのようにして自分を勉強する状態に追い込んでやろうか」と妄想すること自体は苦ではないのである。

 努力ができない人は、無理に努力しようとする必要はない。そんなことをしたって、どうせサボるだろう。だから、手をかえ品をかえ、「サボる自分」の行く先々に障害物をおいていく。遠回りかもしれないが、その営みこそが、後から振り返った時に結果として「努力」になっているのだと思う。

漫画ドラゴン桜2 6巻P160『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 6巻P161『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク