シニア夫婦写真はイメージです Photo:PIXTA

50代をすぎたら、「なんのために、どのように生きるのか」などと小難しいことは考えなくていい。「楽しむために生きる」「人生を楽しむ」というシンプルな境地に達していいのだ。そのためにはお金がいるのでは、などと案じることはない。『島耕作』シリーズで知られる漫画家・弘兼憲史氏が提唱する「お金のかからない日常の楽しみ方」とは。※本稿は、弘兼憲史『楽しまなきゃ損だよ人生は』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。

子供の頃からハマり続けた
回文づくりの魅力とは

 いつでもどこでも楽しめて、しかも、まったくお金のかからない“日常の楽しみ方”の1つに、言葉遊びがあります。

 たとえば……

 新聞紙(しんぶんし)

 安い椅子屋(やすい いすや)

 竹やぶ焼けた(たけやぶ やけた)……

 上から読んでも下から読んでも同じ、「回文」です。

 子供の頃に一度くらいは、面白がったことがあると思いますが、僕はそのとき以来、ずっと回文の魅力にハマリ続け、現在に至っているのです。

 今からもう20年以上前の話になりますが、小学館の『週刊ポスト』誌上で、「弘兼憲史の回文塾」というコーナーを持っていました。

 毎週毎週、僕を中心とするヒロカネ回文プロジェクトが考案した作品と、読者のみなさんが送ってくれた回文のなかから選りすぐりの名作を掲載していたのですが、それが各方面からの好評をいただき、全160作品をまとめた単行本『弘兼憲史の回文塾』も発売されました。

 あなたも一つ、回文づくりに挑戦してみませんか。

 まずここで、「回文塾」のルールを紹介しておきます。

(1)濁音と半濁音(ぱぴぷぺぽ)は付けても付けなくてもいい。

(2)「ず」と「づ」、「じ」と「ぢ」、「お」と「を」、「へ」と「え」、「わ」と「は」などの同音語は入れ替えてもいい。

(3)音引き(「ワー」の「ー」など)は読んでも読まなくてもいい。また、「マー」を「マア」、「ヒー」を「ヒイ」などに入れ替えてもいい。

(4)拗音(ようおん。「キャ」の「ャ」、「キュ」の「ュ」など)は、大きく読んでもいい。

平安、鎌倉、室町時代にも
由緒正しき回文ヒストリー

 では始めましょう。

 まず、誰かとの会話や、テレビやラジオで耳にした言葉、街中の看板や表札などで目にしたお店の名前や人の名前、新発売の商品名やキャッチコピーなどなんでもいいので、その言葉を手当たり次第に逆さに読んでみてください。

 たとえば、「中野」を逆さに読むと、「のかな」となります。

 続けて読むと、「なかの のかな」

 真ん中の「の」を取ると「なかのかな」――「中野かな?」という回文ができあがりました。

 地名シリーズで続けます。

「猪苗代湖」(いなわしろこ)は「ころしわない」……「わ」を「は」に入れ替えると「ころしはない」……「殺しはない」と読めます。

 これを続けると、「いなわしろこ ころしはない」――真ん中に「で」を入れれば、「猪苗代湖で殺しはない」(いなわしろこでころしはない)――という長めの回文ができあがりました。