郵政改革法案の骨格がやっと明らかになりました。その概要は既に報道されていますが、その内容から浮かび上がる本質的な問題点は意外とちゃんと整理されていないので、今週はその点について考えてみたいと思います。
新たな民業圧迫
私は、今回の骨格には二つの大きな問題点があると思っています。その第一は、報道でも指摘されているように、金融の世界で民業圧迫が起きることです。
日本郵政の民営化は維持されますが、親会社の株式の1/3超は政府が保有します。日本郵政グループの内部取引にかかる消費税を免除するというのは、500億円規模の国費が投入されるのと同じです。そして、郵便貯金の預入限度額が現行の1千万から2千万に、簡易保険の加入限度額を2倍弱の2500万円に引き上げられます。
つまり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険は、政府の関与とバックアップを受けつつ、限度額の引き上げ、ビジネスの自由度の向上などの民間企業としてのメリットも享受できるのです。官と民の美味しいとこ取りです。
その結果として起きるのは民業圧迫に他なりません。民間金融機関の預金は1千万までしか保護されない中で、暗黙の政府保証がつく郵貯の限度額が高まれば、預金のシフトが起きないはずがないからです。
実際、過去に郵貯の限度額が7百万から1千万に引き上げられたときは、郵貯の預金残高は14%も増加しています。3百万増えただけでこれだけシフトしたことを考えると、今回の引き上げでは30%位増えてもおかしくないでしょう。それこそが、関係者の狙いなのです。
現在の郵貯残高は170兆円です。過去のピーク時には250兆あったのが漸減し、このままでは今後数年で150兆円まで減少すると言われていました。しかし、そうなったら日本郵政は金融で十分な収益をあげることができなくなるのです(ちなみにメガバンクの最大手でも預金残高は100兆円くらいであることを考えると、150兆でも異常な規模であることに留意すべきです。)
関係者は、郵貯が220~230兆円くらいまで回復しないと厳しいと考えているようなので、今回の限度額引き上げで30%増えれば、万々歳なはずです。当初は限度額を3千万まで引き上げると言っていたのが2千万になったので、表面上は国民新党も妥協したように見えますが、おそらく実際はしっかりとした計算の結果としての2千万と考えるべきでしょう。