自動改札でICカードをタッチする手写真はイメージです Photo:PIXTA

ICカード乗車券「Suica」のサービス開始から約25年。この間、抜本的なモデルチェンジを行わなかったSuicaだが、いよいよ「次世代」の姿が見えてきた。12月10日にJR東日本が発表した「Suica Renaissance」とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

民営化直後から始まった
Suicaの基礎研究

 2025年がやってきた。「ミレニアム」やら「2000年問題」やら騒がれた2000年から四半世紀、2000年代が4分の1を終えてしまったとは、まだ実感がわかない。

 総務省の調査によると、2000年のパソコン世帯普及率は58%、インターネット世帯利用率は60%、携帯電話世帯普及率は75%だった。こうやって数字で見ると意外に普及していたことに驚くが、まだ社会の仕組みにまではなっていなかった。これらの技術が社会の前提となったのは2010年代に入ってからのことだろう。

 そんな2000年代の初頭、2001年12月にサービスを開始したのがICカード乗車券「Suica」だ。それまできっぷや回数券、イオカード(磁気式プリペイドカード)を自動改札機に投入して乗車していたのが、Suicaはタッチするだけで運賃収受や精算が一瞬にして完了する。まさに「未来の技術」という印象だった。

 それから25年近く、Suicaとその技術で構築したICOCAやPASMOなど交通系全国共通ICカードは日々の鉄道利用を支えてきた。逆に言えば四半世紀、抜本的なモデルチェンジを行わなかったSuicaであるが、いよいよ「次世代」の姿が見えてきた。それが12月10日にJR東日本が発表した「Suica Renaissance」だ。

 その前に現行Suicaについて説明をしておく必要があるだろう。2001年にサービスを開始したSuicaだが、基礎研究は民営化直後から始まっている。私鉄・公営鉄道は1970年代から自動改札機の導入に着手していたが、JR東日本が自動改札機を本格導入したのは1990年代のことだ。

 Suicaの開発は早くも磁気式自動改札機の導入直後に始まっている。自動改札機の更新周期は10年であり、新技術を導入するのであれば、2000年頃を目標に置く必要があったからだ。

 次世代改札システムの目標は、ICカードをカバンに入れたまま改札を通過するというものだった。有人改札時代は定期を見せるだけでよかったが、磁気式自動改札機導入で定期入れから定期券を出して自動改札機に投入する手間が増えた。それを改善しようというものだったが、さすがに技術的ハードルが高すぎた。

 1994年から1997年まで3回行われたモニターテストで誕生したのがSuicaの代名詞「タッチ・アンド・ゴー」だ。非接触式ICカードは「かざす」ものという先入観があったが、カードを「タッチ」することで通信時間を確保し、安定稼働するようになった。つまり技術の制約をインターフェイスで解決したのである。

 こうして1998年、JR東日本は「2001年のICカード出改札システム導入」を正式発表した。