出生率低下と高齢化が進み、もはや移民の受け入れは避けられない事態とも言われる日本。しかし、国内での移民政策はまだまだ議論不足のままだ。この現状が招く最悪の未来予想図を、日米ハーフの国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが赤裸々に描く。※本稿は、モーリー・ロバートソン『日本、ヤバい。「いいね」と「コスパ」を捨てる新しい生き方のススメ』(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。
行儀の良い移民だけが
来るわけではない
日本もIT化がより進んでいって国際化するとの報道もあります。しかし情報の国際化だけではなく、実際問題として出生率の低下や高齢化社会を迎えている以上、どうしても労働力としての「移民」を本格的に受け入れるかどうかということについて、しっかりと議論していかないといけない状況になっています。
「移民」を政治問題として考えるなら、リベラル左派政党である立憲民主党や共産党、れいわ新選組は外国人との共生と人権を優先したいと考えており、保守系の自民党と公明党、さらに日本維新の会や国民民主各党はどちらかというと彼らを便利使いしたい方向性を見せています。2023年6月に参院本会議で可決・成立した「改正入管難民法」への賛否で、政党ごとの立ち位置が鮮明に線引きされました。
現時点で政界のコンセンサスは「とにかく積極的には移民政策を考えたくない」というところに重心があり、「日本社会の郷に入っては郷に従う優良な外国人なら共生も考えていい。だが法令や納税など、ルールをしっかり守らないのであればむしろ強制退去を迅速に進めるべし」がデフォルトになっています。
日本経済が絶好調で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と謳われ、どんどん海外進出をしていた1980年代と変わらない優越的な意識で、現在のグローバル社会に対して「いいとこ取り」を試みようとしています。結局、政治家たちの集合知は、何も考えていないのと一緒です。そんな現実逃避の姿勢ではまったくお話になりません。議論とも呼べない政界の移民政策はおいおい破綻していくでしょう。
このように政治が問題から「敵前逃亡」しても、最終的には移民政策を進めなくてはならなくなる、というのが私の見方です。現に日本政府および財界は、すでに着々と移民政策の下準備をあまり宣伝しない形で進めていると思われます。