「情報や意識、目標を共有して……」創業経営者が、こう言うときは要注意だ。
それまで権力を一手に握っていたが、経営がうまく行かない。これまでと一転して、他の誰かに権限を委譲しようとするときとも言える。
しかし、その大半はかけ声だけで終わる。最悪の場合、その経営者は苦しさのあまり、経営を放棄することさえある。
今回は、上場直後に会社を売り飛ばし、莫大なお金を得て逃げる姑息でヒステリックな社長と、それに無批判に追随した社員らの転落ぶりを紹介する。
ここまで来ると、もはや「全てが負け組」と言えるだろう。
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■今回の主人公
社長以下、すべての社員
勤務先: 東京広告社。東京証券取引所2部上場。従業員数230人。東京の都心に本社を構える。28年前に、現在の社長・田口義雄が創業。1980年代後半に、企業のイベントを多数受注し、躍進。90年代以降も、順調に売り上げを伸ばした。しかし、田口の経営に不満をもつ社員が大量に退職。その後は経営難に陥り、水面下で業界の大手企業との間に「身売り」の話が進められていた。
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(※この記事は、取材した情報をプライバシー保護の観点から、一部デフォルメしています)
上場直後に会社を投げ出した社長
役員会議室は“お通夜状態”に
その日の夕方、専務の森 貴代美(46歳)のもとに、役員たちが集まって来た。
4人は次々に問い質した。
「うちは買収されるの?」
「いったいどういうことですか?」