キヤノンPhoto:JIJI

キヤノンが、24年12月期に1600億円もの減損損失を計上した医療機器事業のテコ入れを本格化させる。これまで「治外法権」を認めてきた子会社のキヤノンメディカルシステムズを、キヤノン本体と統合するというのだ。医療機器事業はV字回復を果たせるのか。キヤノンメディカル再生計画のポイントを明かすとともに、キヤノンが乗り越えるべき壁の正体に迫る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

東芝メディカルを6700億円で買収も
シナジーを生めず1600億円の「巨額減損」

 診断機器国内大手のキヤノンが、不振のメディカル部門にメスを入れる。

 キヤノンは2016年に東芝から約6700億円もの大枚をはたいて東芝メディカルシステムズ(現キヤノンメディカルシステムズ)を買収した。買収後も事業運営はキヤノンメディカルに任せており、いわば“治外法権”を認めていた。キヤノンメディカルはCT(コンピューター断層撮影)で国内トップシェアを誇り、キヤノン本体が口出しをせずとも成長できるとみられていたのだ(キヤノンの医療機器事業については、特集『医療機器 21兆円への挑戦』の#2『キヤノン、富士フイルム、リコー…CT・MRI機器事業の「買収シナジー」対決!コピー機大手の序列が激変』参照)。

 だが、キヤノンメディカルは低成長が続いた。売上高こそ増加していたものの、利益率は鳴かず飛ばずで、24年12月期には1651億円もの減損損失を計上してしまった。

 見かねた親会社のキヤノンは、ついに医療機器事業のテコ入れを決断。今年3月、26年1月をめどにキヤノンメディカルをキヤノン本体と統合すると発表した。これは、キヤノンメディカルに認めていた治外法権を撤廃し、キヤノン本体の経営陣が本格的に医療機器の事業運営に乗り出すことを意味する。

 取材を進めると、この改革を歓迎する声が内部から上がる一方、競合他社がキヤノングループの再編を冷笑的に見ている実態が明らかになった。

 CTで国内トップをひた走るキヤノンの医療機器事業は、V字回復を遂げられるのか。それとも、再編が競合を利する結果になってしまうのか。

 次ページでは、キヤノンメディカル再生計画のポイントを明かすとともに、キヤノンが乗り越えるべき壁の正体に迫る。