試乗した「GT-R Premium edition T-spec」。日産グローバル本社前にて試乗した「GT-R Premium edition T-spec」。日産グローバル本社前にて Photo by Kenji Momota

日本を代表するスポーティーモデルの日産自動車「GT-R」。1960年代末に登場した「スカイラインGT-R」は4ドアモデルが起点だ。企業として大きな変化に直面している日産は、現時点で次世代GT-Rについて公表していない。現行モデルを試乗して、その走りから次世代の可能性を探った。(ジャーナリスト 桃田健史)

GT-Rの世界観を、EVで表現できるか

 なぜいま、「GT-R」が日産自動車のモデルラインナップから姿を消すのか?

 そんな疑問を感じながら、JR横浜駅に近い日産グローバル本社1階のギャラリーを訪れた。

 メインステージには、5月に日本で開催されるEV(電気自動車)の世界選手権「フォーミュラE」に参戦する日産マシンが展示されている。

 そのほか、ギャラリー内には「アリア」「リーフ」「サクラ」などの量産型EVや、「エクストレイル」「ノート」「セレナ」など日本独自の電動システム「e-POWER」を搭載する電動モデルがズラリと並ぶ。

 そうした中、多くの来場者の注目を集めていたのがGT-Rだ。

 特に、インバウンド観光客にとっては、GT-Rの存在自体をエンターテインメントとして捉えているような印象がある。彼らにとってGT-Rはジャパニーズカーのシンボルなのだ。

 日産は2月、GT-Rの現行モデルである通称「R35(アールサンゴー)」を8月で生産終了すると発表した。R35とは、車名型式の「ニッサン4BA-R35」に由来する。

 残念なことに、新型GT-Rの導入時期や商品イメージについては現時点で発表がない。

 4月に就任した、イヴァン・エスピノーサ社長は社内外に向けて、日産にとってのGT-Rの必要性について触れてはいるものの、明確な商品計画についての言及はない。

 時計の針を戻せば、日産が2020年5月に公表した事業構造改革計画「Nissan NEXT」では、23年度までに車種数を69から55車種以下へと約20%削減し、その中で日産の経営資源を4つのセグメントに集中するとしていた。

「ノート」などのCセグメント、北米市場向けモデルなどのDセグメント、EV、そしてスポーツの4つだ。

 スポーツについては「GT-R」「フェアレディZ」、そして「スカイライン」の名を挙げた。

 ところが、市場に導入する新型モデルの商品イメージについて、新型フェアレディZの姿はあったが、GT-Rについてはまったく触れられていなかった。

 それから5年が経過したいま、日産は次世代GT-Rについての方向性を示さないまま、現行モデルR35の生産が終了するのだ。

 そのため、GT-Rファンや日産ファンのみならず、グローバルでGT-Rの行方を気にしている人は少なくない。

 次ページ以降では、現行のGT-Rを試乗して、その走りから次世代の可能性を探った。