クリスタルグラスは1300度に溶けたガラスを竿に巻き取って成形するところから始まる。ガラスの塊は、幾多の加工・処理過程を経て最終的な製品となる Photo by Shinichi Yokoyama

 正直、最初は分からないことばかりでしたが、茨城県龍ヶ崎市にある本社・工場を隈なく歩き回った末に「良いものを作っていても、知ってもらえないと売れない」という現実に行き着きました。この会社は、売り上げ規模で言えば親会社の300分の1以下ながら、ものすごい技術・能力を持っています。そこで、予算が限られている中でも、片っ端から“変えていく”ことにしました。

 最初にやったことは、本社・工場の事務棟で正面から入ってすぐの最も良いスペースを占有していた社長室を壊して社外の人との打ち合わせに使う応接室に作り替えました。その次に、デザイン部の専用部屋(ラボ)も確保しました。

 ホームページは、それまで総務部の担当者が不定期に新製品情報を更新していた程度でしたが、もっとワクワクするようなサイトに作り替えるべく、試行錯誤を始めました。これは現在も継続中で、各種の実験を続けています。現場を仕切るのは東京藝術大学の大学院まで出た女性デザイナーで、B2Bの堅い世界で育ってきた私などは彼女の斬新な発想に学ばされることばかりです。

宮内庁でも外務省でも
仕事の中心は欠品補充

――その昔、親会社のライバルである旭硝子の経営幹部が「接待などのお土産としてカガミクリスタルの製品を渡していたそうですが、それが日本板硝子の子会社のものだと知ったとたんに止めてしまった」という笑い話があります。望月社長は、カガミクリスタルについて、どのように説明していますか。

 そんな話があるのですか(笑)。ありがたいことです。

 できるだけ専門用語を使わずに申しますと、82年前に昭和時代のガラス工芸家を代表する各務鑛三(1896年~1985年)という人が始めたガラス専門工場にルーツがあります。この工場は、日本で初めてクリスタルグラスの国内生産に成功しました。クリスタルガラスとは、一般的なガラスと比べて透明度と屈折度を高めたもので、水晶のように輝く透明なグラスということから、通称でクリスタルと呼ばれています。言わば、そうしたガラスの専門家集団です。