自動車 “最強産業”の死闘EVの巨額損失について説明するホンダの三部敏宏社長(公式Youtubeより)

ホンダが0シリーズなどEV(電気自動車)3車種の発売中止などに関連して、最大2.5兆円の損失を計上する。2026年3月期は、1957年の上場以来初の最終赤字に転落する。ホンダの三部敏宏社長がトップ就任時に掲げた「脱エンジン宣言」に基づくEVによる成長戦略を大幅に見直すことになった。0シリーズ発売に向け、社内の経営資源を割いてきたため、他商品の競争力低下や商品ラインアップ不足を招いており、戦略の軌道修正も容易ではない。長期連載『自動車 “最強産業”の死闘』の本稿では、ホンダのEV巨額損失の問題の核心に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

EV減速で「脱エンジン計画」を見直し
サプライヤーへの補償費用も重荷に…

 ホンダが、四輪事業を抜本的に見直す。3月12日、EV(電気自動車)の関連損失として、最大2.5兆円を計上すると発表したのだ。2026年3月期通期決算も、最大6900億円の最終赤字に陥る見通しを示した。最終赤字は1957年の上場以来初となる。

 EVの主力になるはずだった「ホンダ0(ゼロ)サルーン」「ホンダ0 SUV」「アキュラRSX」の3車種について、発売および開発を中止する。損失の内訳は、26年3月期に、現金支出を伴わないEV関連費用で6000億~8000億円、戦略変更に伴う追加的な費用・損失として最大5000億円、27年3月期にサプライヤーへの補償費用などで最大1.2兆円となっている。

 ホンダは、40年に全ての新車販売を、EVと燃料電池車(FCV)とする目標も見直す。三部敏宏社長は会見で、同目標について「達成困難」と認め、「脱エンジン計画」を見直す考えを示した。

 巨額損失の主因として、三部社長は主に米国での環境規制の変化を挙げた。確かに、米国では、トランプ政権の誕生で、EVの普及に逆風が吹いている。しかし、ホンダがつい1カ月前の2月10日に発表した26年3月期予想では、3000億円の最終黒字を見込んでいた。急転直下の巨額損失計上は、足元での環境変化というよりも、先送りにしていたEV損失の計上をこのタイミングで決断したと捉える方が自然であろう。

 ホンダは、0シリーズの26年内の発売に向けて、ここ数年、社内の経営資源を割いてきた。そのため、商品ラインアップ不足や、他商品の競争力低下に陥っている。

 次ページでは、ホンダ関係者への取材を基に、EV「0シリーズ」への注力の副作用を明らかにする。