「ひきこもり大学ピアサポート」は
モヤモヤした感情を共感する場所

「ひきこもり大学ピアサポート」に参加した引きこもり当事者たちが、世間に対して感じていた「モヤモヤ」の正体とは何か

 孤立した引きこもり当事者同士が支え合い、お互い元気に生きていくことを目指した「ひきこもり大学ピアサポート」ゼミナール活動報告会が、新たなフェーズの試みとして注目されている。

 主催したのは、『ひきこもり当事者グループ「ひき桜」in横浜』(割田大悟代表)。ピアサポートゼミナールとは、「似たような経験をした人同士が相互に支え合って生きていく」ためのゼミナール形式の学習会で、2月18日、横浜市内の会場で開かれた。今回の報告会には約50人が参加した。

 活動報告会ではまず、ひきこもり大学の発案者で学長のトラさん(ペンネーム)が、「ひきこもり大学は、対話の場から生まれた。当事者からすると、支援者や精神科医などになかなか気持ちを理解してもらえない。大学という形にすれば、ひきこもり経験者に講師の名前が付くので、参加者が学生という立場になって、今までの思い込みを外してもらい、色々な人が生きていることをゼミのように学んでもらいたい」と、趣旨を紹介した。

 このゼミナールは、ピアサポートの先駆的モデルであるアメリカ保健省のテキストを翻訳し、これまでの1年間、12回にわたって理論体系を学んできた。

 主催者の割田さんは、1年間の活動を振り返り、「ひきこもりピアサポート」とは、「当事者同士であること」と「支え合い」がポイントだと指摘。「言語化できない“モヤモヤした部分”の共有も含め、共感して元気になったり、自分の経験が相手の役に立てたと感じたり、相乗効果がある」と話す。

 なぜ支え合いが重要かというと、「これまでは当事者の声が反映されず、周囲の価値観によって判断されることが多かった。もっと私たちの声に耳を傾けてほしい」との思いが込められているからだと説明した。

 ゼミナールの運営メンバーとして関わった成瀬有香さん(40歳)は、「ピアサポートを学ぶ中で、良い人間関係を構築するための技術が多分に含まれていると感じた」と話す。