6月初頭、震災の復興政策が後手に回る菅政権に対して、自民・公明などの野党は内閣不信任決議案を突きつけた。当初、鳩山前首相や小沢グループをはじめ、民主党内からも大量の造反者が出ると予想されていたが、採決前に菅首相が退陣を臭わせたことにより、賛成派の連携は崩壊、不信任案は大差で否決された。政権発足後最大の危機を乗り越えた菅首相は、いまだに身を引く時期を明言しないまま、首相のイスに座り続けている。一連の「不信任案騒動」は、復興議論よりも政局を重視する永田町への不信感を決定的にした。かつてない政治不安が行き着く先はどこか。国民が希望を託せるリーダーは現れるのか。いくつもの政局を第一線でリサーチしてきた政治アナリストの伊藤惇夫氏が、混迷極める政治を鋭く斬る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

政局を仕掛けるタイミングはズレていた?
混迷を浮き彫りにした「不信任案騒動」

いとう・あつお/政治アナリスト。1948年生まれ。神奈川県出身。学習院大学卒業後、自由民主党本部事務局に勤務。自民党政治改革事務局主査補として、政治改革大綱の策定に携わる。その後、新進党を経て、太陽党、民政党、民主党で事務局長を歴任。「新党請負人」と呼ばれる。2002年政治アナリストとして独立。執筆やコメンテーターの世界で広く活躍。
Photo by Toshiaki Usami

――今回の「不信任案騒動」は、政権交代以降も終わることなく続いてきた政治の混迷ぶりを象徴するような事件だった。東日本大震災の復興を議論するよりも政局を重視する政界に対して、国民は辟易している。この政局をどう評価しているか。

 以前から菅首相は辞めるべきだと思っていたので、菅政権を退陣表明に追い込んだという結果については、意味があったと思う。しかし、政権打倒を図る野党にしても、それに反転攻勢をかける与党にしても、造反を図った小沢グループにしても、皆一様に戦略が不足していたように思えてならない。結果として、政治的な混乱を広げてしまった。

 野党については、そもそも不信任案を仕掛けるタイミングがズレていたように思う。首相を辞任させるのは、想像以上に大変なことだ。自発的に辞めさせるか、不信任案を可決させるか、どちらかしか方法がない。また、たとえ不信任案が可決されても、ほとんどの場合は解散総選挙に持ち込まれてしまう。よって、野党はかなり綿密な戦略を練るべきだった。