いまメディアで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。
「不安」だから必死になり、そこに気迫が生まれる
「小西さんは、自信にあふれてますね」
ときどき、そんなふうに言われることがあります。しかし、そのように言われると、いつも戸惑いを覚えます。30代の頃から日本の大企業のサラリーマンに「小西さんと向き合うと、すごい風圧を感じる」といったことをよく言われたので、もしかしたら、そのように見えるのかもしれませんが、内実はまったく異なるからです。
実際には、そう見えるだけなのです。「私は自信がある」と多少なりとも思えるようになったのは、ここ数年のこと。70年以上生きてきて、悲喜こもごも豊富な経験をし、ようやく「多少のことがあっても乗り越えていける」と思えるようになった。それまでは、いつも不安でした。不安だから必死で考え、必死で働く。その繰り返しだったのです。
いや、常に不安であるのは、いまも変わりません。
いま私はテクスケム・リソーセズの会長を務めていますが、約50社ある事業会社の既存事業はほとんどそれぞれの社長に任せています。私が注力しているのは新規事業の開拓。新しいチャレンジですから、いつも不安です。
これまで、私は約70の事業を立ち上げてきましたが、そのうち20の事業は失敗に終わりました。「打率がいい」と言われることもありますが、私はそうは思いません。新規事業を成功させるのは、それだけ難しいことなのだと肝に銘じています。だからこそ緊張感をもって仕事に取り組んでいる。不安を味方にしていると言ってもいいでしょう。その意味では、若いころから何も変わらないのです。
ただ、これまで積み重ねてきた成功と失敗から多くのことを学んできました。それをしっかりと活かせば、「成功確率は上げられる。たとえ失敗したとしても命までは取られない」という自信のようなものはある。ここ数年でようやく、そう思えるようになったのです。それまでは、自信があるなどと思ったことは一度もありませんでした。