新年を迎えて「今年こそは人生を変えたい」「夢を実現したい」と思う人は多い。しかし、一体どれだけの人がその実現に向け努力しているだろうか。現役の経営者で陽明学者の加地太祐氏は、「成功するためには、何より実践が大事」と説く。本連載では、そんな加地氏の初の著書成功する人の考え方』(ダイヤモンド社より1月16日に発売予定)の内容をベースに、これまでの人生を変えて、成功をたぐり寄せるためのポイントをお伝えしていく。何か新しいことに挑戦する時、人は恐怖を感じるものだが、それは成功する人たちも同じ。でも、彼らはその恐怖を成功のエネルギーに変える方法を知っている。

キミを襲う恐怖

 成功する人というと、強く強靱な精神の持ち主だと思うかも知れない。

  しかし、私の知る限りでは、臆病で神経質な人が多いように感じる。

 事業で新しい企画やプロジェクトを始めるとなると、不安で眠れないとか、食欲がなくなり体重を落としたりする人も沢山いる。

 僕らは、何か新しい挑戦を控えると、どこか恐怖に襲われるが、成功する人達も同様に恐れを感じているのだ。

恐怖への2つの対処法

 しかし、成功する人は、目の前に迫ってくる恐怖に、ただ怯えているだけではない。

 彼らは、恐怖を自分のエネルギーに変える方法を知っている。

強烈な恐怖は、成功するために必要な糧であり、それをエネルギーに転換できるかどうかが、成功する人になれるかどうかの分かれ目なのだ。

 恐怖への対処法は二通りあると言われる。

 ひとつが別のことを考えて忘れること。

 もうひとつが恐怖を迎え撃つことである。

 一般的に何か問題があっても、「食事の時くらいは忘れなよ」なんて言葉を聞く。

 しかし、成功する人は絶対に忘れることができない。

 なぜなら、成功する人は問題を放置したら未来がどうなるかを知っているからだ。

 問題を放置すると、それは時間の経過に比例して大きくなる。

 そして解決できないほどの大きな問題になってしまったとき、人は無力感に打ちひしがれるのだ。

 だから、成功する人は恐怖を忘れようとはしない。

 そして、どんなに大きな恐怖にも真正面から向かい合い、食事のときも、シャワーを浴びているときも、寝る寸前まで知恵を絞って問題を解決しようと努力する。

 そうやって四六時中考えた結果、思いもよらない解決策を生み出すのだ。

経営の神様の一言

 今から5年ほど前に、松下政経塾の人たちと合宿する機会があった。そこで有名な熱海会談のエピソードを聴いた。

 不況の中、松下電器(現パナソニック)系列の多数の販売会社や代理店が赤字経営に落ち込んだ。

 当時、松下電器の会長だった松下幸之助は、「実情を教えて欲しい」という販売代理店の社長ら200人を熱海のホテルに招いて懇談会を開いたのである。

 それは東京オリンピックが開催された1964年のこと。高度成長のシンボルである家電製品はほぼ普及し、金融引き締め政策が重なって需要は停滞していた。

 販売会社の中には、資本金500万円で1億5000万円の欠損を出す代理店もあり、松下電器への不満は爆発した。

 松下幸之助は「経営の神様」とも呼ばれ、今では成功した人の代名詞にもなっているが、当時は苦境に立たされていたのだ。

 販売代理店は「製品が悪い」「売り方が悪い」など、松下電器を非難し続けたという。

 その時、松下幸之助はこう反論した。

「苦労していると言うが、この中で血の小便をするほど苦労している人はいるのでしょうか?」

 その後、松下幸之助は販売店に感謝とお詫びの言葉を述べ、そこから松下電器の躍進が始まる。

 その時、血の小便を流していたのは幸之助自身だったのではないかと思う。

どんなに苦境に立たされても、それを真剣に受け止め、自分のエネルギーへと変化させる

 これこそ、成功する人が天才と呼ばれる由縁なのである。

加地太祐(かじ・たいすけ)
1976年大阪生まれ。株式会社aim代表取締役。
阪南大学高等学校中退後、溶接工に。その後、サラリーマンになり英会話スクールに通うが、1年後の2004年に通っていた英会話スクールが倒産。当時の従業員に「給料を数ヵ月もらわぬままオーナーが失踪したので助けてください!」と生徒なのに相談される。月商18万円で家賃支払いが23万円と大赤字なのにもかかわらず、「可哀想だから」と400万円を借金して援助し、サラリーマンを続けながら思いがけずオーナー経営者になる。
しかし、3ヵ月で資金がなくなり、助けてと言った従業員も退職。その後、英会話スクールの経営を実弟にまかせるが、1年後に病死する。この人生のどん底のときに安定したサラリーマンを辞め、給料の出ない英会話スクール経営1本に絞る。その後、NOVAが倒産し英会話教師だった外国人失業者があふれた。彼らを黙って見過ごせないと、生徒が増えたわけでもないのに日払いで外国人を雇う。この行動が新聞に紹介され、それがもとで生徒数が飛躍的に増え、以後、順調 に業績を伸ばす。
2015年2月6日、交通事故に合い5日間意識不明に。6日目に目覚めたとき、「このまま死んだら僕はこの世界に何も残していないことになる」と愕然とする。
それがきっかけで、スタッフや愛する娘たちに残せるのは「言葉しかないのだ」と悟り「成功する人の考え方」の連載をスタート。純粋に言葉の力を試すために名前をふせたままスタートするも幸運にも支持を得て開始8ヵ月で3万いいね!を突破。月間リーチ数250万人の人気ウェブサイトに成長する。年間1000 人以上の経営者と対話し、会社経営を行う傍ら、1人でも多くの成功者を世に出したいと、日夜、記事の執筆に精力を注いでいる。山田方谷を学ぶ実践塾「方谷 塾」塾頭、陽明学者。
所属団体 
・盛和塾<大阪> 世話人。稲盛和夫の経営者塾世話人
・EO Osaka<Entrepreneur Organization> 理事。アメリカに母体を持つ経営者団体。年商100万ドル以上の経営者が集まる団体
成功する人の考え方HP http://ekusia.com/
フェイスブックページ  https://www.facebook.com/seikousuru/
 

※次回は、1月18日(月)に掲載します。