小室 そうなると、優秀な人ほど「いい加減にしろ、甘えるな」とその企業に見切りをつけます。もっと言えば、日本という労働市場に見切りをつけて、優秀な人材から順にどんどん海外流出してしまうわけです。高度な人材は日本にこだわる理由はないのですから。
実際に、現在すでにみなし残業制の企業では、管理職が一部のお気に入り人材に甘えて、仕事を振り続け、メンタル疾患にさせてしまうか、転職させてしまうということが頻発しています。そういう職場を山ほどコンサルしてきているので、「管理職スキルを高める前にホワイトカラーエグゼンプションを入れてはダメ」というのが私の意見です。
労働時間の上限とインターバル規制が優先
青野 制度そのものを否定しているわけじゃないんですね。
小室 大事なのは制度導入の順序なのです。まずは徹底した労働時間の上限とインターバル規制を導入すること。すると管理職は短い時間で成果をあげるために本気で仕事を取捨選択し始めます。こうして「時間当たりの生産性」を徹底して高めることが当たり前になった職場で、その後にホワイトカラーエグゼンプションを導入すれば、本来の目的通りに機能するでしょう。

秋の国会で、このホワイトカラーエグゼンプションと労働時間の上限規制が同時にセットで出されそうな動きになってきていますが、この動きは本当に残念です。あくまでも上限規制やインターバルが機能してから導入すべきです。
青野 現状は、働く人の基本的人権がまだ守られていないレベルですからね。
小室 そうなんです。この3月に政府の出した働き方改革実行計画にも、勤務間インターバル規制(EUでは、前日仕事を終えてから11時間空けないと、翌日の業務を開始してはならない)については、まだ「努力義務」としてしか盛り込まれていません。ただ、施行から5年後には改訂予定で、その際は義務になるでしょうから、今からそれぞれの企業で先行導入しておくことが大事だと思います。



