ネットワークを制限する取り組みを導入した当初、職員の猛烈な反発にあったという、あずさ監査法人の大塚専務理事。反発の声をどのように覆していったのか。納得感を得ながら環境を整備していく上で、最も必要な要素とは何なのか。前編に続いて、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長との対談を通じて見えてきた、働き方改革の本質とは。(まとめ/アスラン編集スタジオ 渡辺稔大、撮影/鈴木靖紀)

業務、制度、カルチャーの改革は
すべてつながっている

小室 前編でうかがったお話の中で、残業を25%削減されたことや、「産業医に相談にくる体調不良者が激減した」というのが、大変印象的でした。また、「21時(水曜日は20時)」以降ネットワークに繋げなくしてしまう、というのも大変思い切った施策ですよね。これらを支える御社のカルチャーはどうやって変革したのですか。

働き方改革への恐れ「仕事が終わらない」「人が育たない」は本当なのか大塚敏弘(おおつか・としひろ)
あずさ監査法人専務理事、あずさオフィスメイト株式会社社長。慶應義塾大学商学部卒業。1987年、港監査法人(旧KPMG Japan)入所。2003年、あずさ監査法人代表社員に就任し、HR企画本部副本部長、国際人材室長等を歴任。理事、常務理事を経て現職

大塚 「自ら考え、自ら行動しよう。本質を捉え、最短距離で最大の効果を出そう。ワークもライフもエンジョイしよう。そして昨日の自分を越えよう」という理念を作成して、2018年7月から全面展開しています。カルチャーが変わらないと業務改革も制度も機能しません。

「 本質を捉え、最短距離で最大の成果を出そう」というのはまさに、個人としてチームとして意識してほしいことです。「これって何のためにやるんだっけ?」というコミュニケーションが率直にできていることが大事です。

「ワークもライフもエンジョイしよう」というのは、小室さんの受け売りに近いですが(笑)、ワークとライフはトレードオフの関係ではなく相乗効果が生まれるものだということです。

 会計士は、会計監査の専門家でありますが、ビジネスパーソンでもありますので、「もっと自分の引き出しをいっぱい持とうよ」と。クライアントのビジネスもきちんと理解しないといけないので、知識や教養を身につけましょうというメッセージが含まれています。

 そして、人との競争じゃなくて、自分の中で一歩一歩前進していこうという想いが、「そして昨日の自分を越えよう」に集約されています。