三菱地所プロパティマネジメントは、社員との向き合い方において、働き方改革の本質に辿り着いた企業と言われる

長時間労働の改善に取り組み、残業時間が減っていくと、「頑張ったのに給料が減る」という不満が生じることも少なくない。そんな不満に真っ向から応え、削減した残業代を全額社員に還元した企業が、三菱地所プロパティマネジメントである。株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長は、同社の働き方改革の様々な取り組みを「本質に辿り着いた好事例」と評する。対談相手に同社の川端良三社長を迎え、働き方改革のトップランナーたる理由を明らかにする。(まとめ/アスラン編集スタジオ 渡辺稔大、撮影/内藤洋司)

削減に成功した残業代を
なぜ全額還元したのか

小室 三菱地所プロパティマネジメントは、2017年度、働き方改革開始前の2015年度対比で削減に成功した1億8600万円の残業代を、翌年度の賞与などとして社員に全額還元したことで話題となりましたね。「そんなの、普通はできない」と思って、最初は信じられなかったことを覚えています(笑)。

川端 2016年度から働き方改革の取り組みをスタートし、2015年度の残業時間・残業代と比較して、減った分の差額を全額社員に還元しました。

 ムダな仕事を削減して残業を減らしていくと、当然、残業代として得ていた分の所得が減ります。すぐに「余った時間を有効活用する」という意識に切り替えられる人もいますが、やはり全員がそうとは限りません。そのハードルを乗り越える1つの方法として、還元策を行いました。

小室 社員に対しては「働き方改革に取り組むインセンティブ」として機能したわけですね。

川端 そうなんです。翌年の2017年度には「ワークスタイルチャレンジ」という名目で、部門全体の時間外業務の平均が月間20時間以下、年次有給休暇取得率80%以上を達成した部門の全社員1人につき、最高6万円の報奨金を支給する取り組みも行いました。

小室 部門一丸で働き方改革に取り組み、目標をクリアした部署・社員に、削減した残業代を配分することにしたのですね。

川端 その際に重要なポイントだと考えたのは、「仕事を押し付け合わない」ことです。個人ごとに残業20時間以下を達成したかどうかを評価すると、早く帰るために仕事を押し付け合うようになってしまう。それでは本末転倒ですから、チームワークで20時間以下の目標を達成したら、その「チームに」配分するというルールにしたわけです。