Glenn Gould Gathering (Photo: Fred Plaut)
今年生誕85年を迎えるカナダの伝説的ピアニスト、グレン・グールド。独特の曲解釈と演奏で世界から絶賛された。坂本龍一も少年時代からグールドを敬愛し、影響を受けた。本年12月、生誕85周年とカナダの建国150周年を記念して、東京青山の草月センターにてトリビュート・イベントが開催されることになり、坂本龍一がキュレーター就任。

 

─映画の公開後も今年はさらにお忙しそうです。

 4月にワタリウム美術館でやった『設置音楽展』は、できたばかりの『async』をいろいろな形でお聞かせするというものだったけれど、それよりも、インスタレーションの側面を強化した展示を12月にICCで行ないます。

『async』で使った音に加え、新しい要素もどんどん入れる。それは今後の活動のための、いわば『async』と新作の橋渡しのような形になるのかな。それとほぼ同じ頃に草月ホールで、グレン・グールドのトリビュート・イベントもやります。今年2017年はグールドの生誕85周年、没後35年という記念の年。

 グールドの生国のカナダの建国150年という年でもあります。なにしろぼくは昔からグールドには大きな影響を受けていて、ピアノ演奏ではグールドの真似をして猫背で弾いて先生から怒られたりもしたぐらい(笑)。

 その恩返しだと思って、イベント『Glenn Gould Gathering(GGG)』のキュレーターを引き受けました。ただ、そこではたと困って、グールドは有名だしみんな知っているし、普通のことをやってもつまらないだろうと、グールドの音楽、演奏をリワーク/リモデルしようと。

 グールドの再構築ですね。ドイツのアルヴァ・ノト、オーストリアのクリスチャン・フェネス、クラシックのピアニストでありながらテクノ・ミュージックもやっているフランチェスコ・トリスターノに声を掛けました。

 ぼくも含めた4人でそれぞれの考えるグールドのリワーク/リモデルのコンサート、トリビュート・イベントをやります。アーカイヴ映像や、グールドが好きだったという勅使河原宏監督作品、映画『砂の女』の上映もして、グールドのいろいろな側面を紹介したい。

─来年以降のご予定は?

 実はオペラを作ろうと思っています。1999年にやったぼくの初めてのオペラである『LIFE』から20年目の2019年に向けての新しいオペラ。内容はいままさに構想中で、具体的な形はまだですが、能楽の影響はかなり大きくなるかな。

 能をそのままやるのではないけれど、西洋と東洋を合体させた形のものになるはず。能楽師にも参加してもらいつつ、メディア・アート的でもあり、パフォーマンスやインスタレーションの要素も当然入る。

 フラットなスペースでもできれば、ステージの上に載せてもできる、フレキシブルな舞台になるんじゃないかな。もともと高谷史郎さんから「新しい作品を作りましょう」と言ってもらってスタートしたので、高谷さんとの共作です。

 今回は脚本も自分で書こうと思って書き始めてもいます。生まれて初めての脚本の執筆なので勝手がわからず大変ですが、来年に入ったらすぐに曲作りを始めなきゃいけない。オペラの骨子となる脚本がないと作曲が進まないので、物語と時間の流れに沿った骨子を早く構築しないと。

LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999 (写真=瀧本幹也)
1999年に上演された坂本龍一の初のオペラ作品。分裂と闘争の世紀であった20世紀を総括し、来るべき21世紀への希望を希求する内容となり、多大な映像、ナレーション、テキストを使用した壮大な作品となった。2007年は本作の素材を再構築したインスタレーション作品も制作された。

 

─オペラの構想はいつから?

 一年半ぐらい前から。病気から回復してきた頃。病気をして治療が終わって回復してきて、2年経ってだいぶ体調が戻ってきたかなという頃です。ちょうどそのタイミングで高谷さんがお尻を叩いてくれた。すごく時間がかかったけれど、身体と同時に頭のほうも復活してきて、新しい知的好奇心もどんどんもたげてくる。

 そういう中で生まれた構想で、『LIFE』からちょうど20年ということもあり、『LIFE 2.0』というものになるのかな。まだまだ形にはなっていませんが、ちょっと構想を漏らしたらヨーロッパのいくつかのオペラ劇場から上演したいという声も挙がってきている。

 こうなった以上、実現させるしかない。そう、だからまだまだ『コーダ=終章』じゃないんですよ(笑)。