なぜ、いま「経済学の用語集」が必要なのか?
ある社会が他の社会より豊かなのはなぜだろう?
銀行がつぶれるのはどうしてだろう?
税金はどこまで高くてもいいものなのだろう?
経済学者はこうした問いに答えようとする。しかし往々にして彼らの間でも意見が異なる。門外漢にとって経済学は、専門用語と複雑な数学でいっぱいのよくわからない言語にしか聞こえないかもしれない。また、経済ニュースを見れば、株価が急騰と急落を繰り返し、経済は危機と危機の間でよろよろしているように思えて途方に暮れてしまうかもしれない。専門家の言葉遣いの後ろにある経済学の大部分は、実はかなり単純な原則に要約できる。本書では、経済はどう動くものか、また経済をどう運営するべきかについて、理論を感覚的に示す。
経済学とは実際のところ何だろう? 「経済学」は古代ギリシャで使われていた「家計のやりくり」を意味するギリシャ語の言葉がもとになっている。今日、経済学の対象はもっと幅広くなっているが、家計や個人は、古来ずっと、経済を構成する要素だった。人々は、自分の得た所得で何を買うか、あるいはどれだけ働くか、意思決定を行う。その際、彼らは人生の根本的な経済的事実に直面する。すなわち、食料や電力、時間といった資源には限りがあり、何を消費し、何を生産するか、選ばなければならない。そんな選択を行うのは人間であり、だからこそ人間行動の説明が経済学の核になっている。消費者が新しいコンピュータを買い、実業家が新しい工場を建て、労働者が町から遠く離れた場所での仕事に就くとして、それはなぜなのだろう?
経済学者の大部分は、自分がやっているのは科学だと考えている。たとえば失業に見られる傾向など、経済現象を統べる一般法則を明らかにするのが自分の仕事だと考えている。物理学者がロケットの飛び方を説明する法則を探すのと同じである。しかし、人間行動の法則を特定するのはロケットの軌跡を説明するよりずっと難しい。だから、経済学者たちの間でも意見は一致しない。たとえば、経済を不況から抜け出させるべく政府はお金を遣わないといけないかどうか、公的債務はどの水準までなら持続可能であるか、といった問題がそうだ。
本書では、そうした問題が論じられるときに使われる難しい言葉の意味を解きほぐし、経済学の概念をわかりやすく説明する。そうすることで、経済学の重要で影響の大きい概念がもっとわかりやすくなればと思う。
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