2011年は東日本大震災、円高、ユーロ危機、タイの大洪水と、日本にとっては内外ともに災厄多き年だった。12年はそれ以上に不確実性、不安定性が高まる年となりそうだ、何しろ世界は政治の季節に突入する。1月の台湾総統選に始まり、露、仏、米、韓では大統領選、中国でも政権交代が行われる。北朝鮮情勢も不安材料だ。そうした状況下、12年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々に、アンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。第10回は作家・ジャーナリストの莫 邦富氏。

もー・ばんふ/1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数

①中国では習近平政権が誕生、
安定第一路線を部分的に修正

 これまでの中国政府は経済発展のみにしか重点を置かず、山積している社会問題や国民の不満を力ずくで無理矢理抑え込んできた。しかし、11年末、広東省汕尾市烏坎村で強制土地収用をめぐる大規模な抗議行動が起こった。

 弾圧から融和する方向へ姿勢を変えざるを得なくなった地元政府の動きと、その後の国民からの反響を見てもわかるように、国民感情を無視した「維*(のぎ偏に急、ウェイウェン・安定第一の意味)」路線はもはや破たんしている。習近平政権誕生後、その「維*」路線をある程度修正するだろうと思われる。