磁力でハンドの硬さを制御、
生産性を向上させる万能ロボットハンド

複雑な形状のもの、壊れやすいものも しっかり把持する「万能電動グリッパMRαONE」

 北九州市戸畑区にある工場では、磁性流体を応用したロボットハンド「万能電動グリッパMRαONE」の実演展示が行われている。実演するのは、山口・北部九州を拠点とした生産材(ものづくりに必要となる機械や工具、材料)の専門商社である前田機工(本社・山口県下関市)である。

 同社の國本研一社長は、「通常の産業用ロボットは、多様な作業工程でロボットハンドの取り換えが必要で、特に少量多品種の部品は交換の頻度が多く、生産性を大幅に落とします。万能電動グリッパMRαONEは、磁力でハンドの硬さを制御できる万能ロボットハンドで、対象物によって取り換える必要がないのが大きな特長です」と説明する。

「MRα」が封入されたゴムパッド部と、繊細な動きを可能にする駆動部

 仕組みとしては、対象物に押し当てると磁性流体の先端部が柔軟に変形し、任意のタイミングで手先を固化させて対象を把持する。故に、ほとんど圧力をかけずに、対象物を傷つけず、しっかりとホールドできる。対象の精密な計測が不要になり、産業用ロボットの動作設定が容易となり、低価格化が実現するというメリットがある。

 
デモンストレーション用の装置の前に立つ前田機工國本研一社長

 同ハンドは、北九州市の支援を受けて九州工業大学と同社が開発した、産学官連携の成功事例であり、すでに多数の企業から導入の打診を受けており、工場の増設も検討している。國本社長は「北九州市には、地元企業のロボット導入を支援するFAIS(北九州産業学術推進機構)内に産業用ロボット導入支援センターもあり、情報量も豊富で助成金を含め事業化に向けて非常に前向きに支援をしてくれます。その意味で、この立地環境なしには誕生し得なかった製品です」と開発の実感を語る。

 日本をリードする「ロボット産業拠点の形成」を目指す北九州市。ものづくりの実力を持つこうした中堅企業への支援を通して、新たな価値創出を図っている。

問い合わせ先:
北九州市産業経済局新産業振興課
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電話番号:093-582-2905