近畿大学 塩崎均近畿大学 塩崎均名誉学長 Photo by Hiroki Kondo 

定員割れが相次ぐなど、私立大学の経営は厳しい。そんななか、つんく♂プロデュースのド派手な入学式や「マグロ大学言うてるヤツ、誰や?」などの刺激的な広告で異彩を放つのが近畿大学だ。2018年度一般入試の志願者数はのべ15万人を突破し、5年連続の日本一。志願者数は10年で約2倍に伸びている。過去6年間にわたる改革を牽引してきたのは、前学長で名誉学長の塩崎均氏。まずは改革の原点を語る。

学長になるまでは医学部の世界だけ
こんなに学部があるとは知らなかった

 近畿大学学長に就任したのは2012年のこと。以来、2018年3月31日までの2期6年間を全うすることができた。今後のことは後任の細井美彦学長に任せ、私自身は法人の理事や名誉学長として、引き続き大学の発展のために尽くしていくつもりだ。

 思い起こせば、あっという間の出来事だった。やりたいことはすべてやらせていただいた。すべて周囲の方々の助力のおかげだと思っている。

 大阪大学医学部を卒業して医者になってから、ずっと医療の世界のことばかりで、それ以外の分野についてはほとんど知らないままだった。恥ずかしながら、学長に就任してまず驚いたのは、「うちの大学にはこんなにたくさんの学部があったのか」ということだ。

 考えてみたらこれだけ大きな大学なのに、学部長時代、全学部の関係者が集まって話す機会はまったくなかった。総合大学なのに医学部の中だけに閉じこもって、まるで単科大学にいるような意識でいたのだ。

 これではいけないと思ったのが、すべての始まりだ。

 最初の1年間は、全国にある関連施設を巡ることにした。教員にも総合大学の意識を持ってもらおうと、月1回、全学部長を集めた昼食会を開いた。

 定期的に会って話をしていれば、どこのキャンパス(施設)で、誰がどんな内容を研究しているのかもおおよそつかめてくる。医学部のことしか知らなかった私にとって、他学部の研究内容を聞くのはとても新鮮なことだった。

 おそらくどの大学でもそうだろうが、学部長はつい、学部の利益を最優先に考えてしまう。そうではなくて、全員が「オール近大」で考え、総合大学としての強みを発揮していくこと。これが改革の出発点だ。