【大学はブランディングで「格」上げできるか?関西私大にみる仁義なき戦い】『大学図鑑!2019』は、シリーズ第一作発売から20年目を迎えました。最新刊の発売を記念して、実際に大学を取材しているスタッフライターのみなさんにこぼれ話を聞いていきます。今回は、関西の大学を取材している宇野浩志さんに、関西で今もっとも勢いに乗るあの大学の実力と、ブランドづくりを通じた大学の格上げが可能なのか聞きました。

 関西の私大には、「関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)」、その下に「産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)」といったランク分けがある。受験時に散々聞かされるせいか、学生たちもそのグループのなかで、自分が通う大学と他の大学を比べている。「関関同立では、うちがいちばんイケてる」と語る同志社生にとって、京大などの国公立や産近甲龍は比較の対象ではないのである。

 ただ、大学図鑑の取材で学生に話を聞いていると、そうしたランクとは別に「勢いがある」「華がある」といわれる大学がある。ここ数年の関西では、圧倒的に近畿大学の評価が高まっている。

関西で「勢いがある」「華がある」といわれる大学とは?

 「産近甲龍のなかでは、近大が頭ひとつ飛び抜けた印象。うちの大学も“むすびわざ”などと言って産学連携の強化をアピールしているけれど、近大のような実績がない。“マグロ大学”のインパクトには敵いません」(京都産業大学経済学部生)

 「学部にもよるけれど、学力だけ見ると立命館と近畿大学との間にそれほど大きな差があるとは思わない。私の友人は、近大に落ちて立命に受かりました。5年後、10年後は、近大に追い抜かれても不思議ではありません」(立命館大学国際関係学部生)

 近畿大学といえば、2002年に農学部の水産研究所が世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功し、一躍名を知られるようになった。また、2014年には「超近大プロジェクト」と銘打ち、総工費500億円をかけて東大阪キャンパスの大規模整備を開始。2017年に目玉となるアカデミックシアターがオープンし、キャンパスの新しいシンボルとなっている。

 志願者数はこの10年で2倍以上に増え、過去5年にわたって全国の私大で最多を誇る。2018年度は同大史上最多の19万2457人(推薦入試含む)を記録した。名実ともに、いま日本でもっとも人気のある私大なのだ。

大学の序列・イメージは偏差値だけでつくられない

 これだけ志願者が増えると入試のハードルも上がり、関西私大の序列が変わるのではないか。

 以前、関西の大学教授数人に集まってもらって話を聞いたが、「今のところは、ブランディングと広報が巧みということに尽きる」というのが結論だった。

 「農学部など研究の成果が出ている学部もあるが、人文系ではそれほど質のいい研究がない。何をもって優劣をつけるのかにもよるが、学生が多いから近大の文学部が龍谷大の文学部を追い抜くかというと、そういうものではないと思う」(公立大・社会学部教授)

 「4年間でどれだけ専門を深められるかは、授業を受ける学生全員の地頭や意欲にもよる。基礎教育の段階で、教員は学生の大半が脱落しないレベルとスピードで講義しないといけない。それを鑑みると、たとえば国公立と私立、関関同立と産近甲龍で教えられることにはまだまだ大きな差がある」(私立大・社会学部教授)

 もっとも、これらは教授の意見だけあって、学問的な研究を重視したものだ。大学の序列は基本的には偏差値――つまり入学時の学力と連動しているが、とくに現役生にとってはそれだけでもない。講義の内容や難易度、キャンパスの設備、学生の気質などが混ざり合って、各大学の学風やイメージを形成する。

 近畿大学のような実学重視の姿勢を好む学生も多いし、就職に強いかどうか、モテるかどうかだって学生の自信につながる要素だ。前出の私大教授も、「今の近畿大学はイメージ先行で評価が上がっているけれど、そのイメージによっていい教員や学生を集められれば、ゆくゆくは結果がついてくるかもしれない」という。

 「固定概念を、ぶっ壊す」というのが、近大の入試ポスターに使われたキャッチコピー。同大の取り組みは、関関同立と産近甲龍の壁を壊せるだろうか。