危険運転致死傷はもともと「運転中の行為」に対する処罰を前提にした法律で、飲酒や覚せい剤使用、大幅な速度超過など「通常の運転ができない状態」を対象にしている。

 今回、石橋被告は停車し、降車した状態だった。この点が一部専門家から「困難」と指摘された理由だ。

 成立して日の浅い法律だが、法の運用は厳格でなくてはいけない。

 しかし、検察側としても今回の事件で無罪放免とするわけにはいかない。そこで予備的訴因として、死亡した夫婦らを「現場」にとどまらせた行為について「監禁致死傷罪」を追加した。

 では、夫婦らは「監禁」された状態だったかを考えると、「これも厳しい」との見方があった。

 今回の判決は危険運転致死傷の成立を認めたが、厳格に法を適用すると「無罪」の可能性があったのだ。2人の生命を奪い、罪の意識さえ感じていないような姿勢に、無罪の可能性…。世間の憤りが噴出するのは当たり前だった。

別の器物損壊や強要未遂も

 初公判からの動きを追ってみよう。

 3日の初公判。石橋被告は夫婦2人が死亡した事実関係は認めたが、弁護側は「妨害運転と夫婦の死亡に因果関係はない」と主張した。

 5日の第3回公判で石橋被告は「カチンときた。むかついて追いかけた」と供述。事故が起きるのではないかとの予見性(争点部分)には「考えていなかった」と述べた。一方で、検察側の「夫婦に落ち度はあったのか」との尋問には「ないと思う」。あおり運転を繰り返した理由に対しては「勢いじゃないですかね」と他人事のように答えていた。

 6日の第4回公判では、東名あおり運転事件とは別の器物損壊や強要未遂の罪計3件を審理。東名あおり事件の後にも、別の車両にあおり運転をした後「殺すぞ」と怒鳴り、中国自動車道で昨年5月、山口県警のパトカーにあおり運転をするなど、信じられないような事実も次々に明らかにされた。