51歳で大学院に入学
ハローキティとは少し離れるつもりが……
――化粧品販売の経験から熱望していた女性支援は、形にできたわけですね。
もうひとつ興味を持った「人の心の問題」については、自分とどう関わればよりよく生きられるのかを学ぶために、仕事をしながら東京大学大学院教育学研究科に進学しました。51歳のことです。受験を控えて睡眠時間は3時間でしたが、私のチャレンジを身体中の細胞が応援してくれているのだと感じながら駆け抜けました。
他人となかよくするためには、自分自身と折り合いをつけて「自分となかよく」することが必要ではないか、と思っていたのです。さまざまな悩みの根本には、ほぼ人間関係の悩みがあるにもかかわらず、具体的にじぶんとなかよくする方法を学ぶ機会はありません。大学院進学の動機には、大切なメッセージを伝えることに残りの人生をささげたいという決意も含まれています。卒業後は、教育関連の仕事に軸足を移すつもりでした。
紆余曲折を経て、残りの人生を捧げて取り組みたいテーマが見つかった。その準備もできた。これからは、ハローキティとは少し離れた場所で仕事をしていこう……そんなときのことです。
詳しい経緯は後ほどお話しますが、「じゃああなた、やってみる?」という、辻社長から思いもよらない言葉をかけられました。
当時経営が厳しかったピューロランドを改善するために、出向を打診されたのです。エンタメ業界の素人である私にできるのか。すでに固めていた今後の方向性はどうなるのか。
私の答えは、「少し考えさせてください」でした。
それから2週間、自分との対話が続きました。経験面でも大病後の体力面でも、断る理由はいくらでも思いつきました。でも結局、悩んでいる時点で「無理です」という選択肢はないのでしょう。断る理由ではなく背中を押してくれる何かが欲しかったのです。
(後編に続く)
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