アポロ11号の月着陸から50年、超進化を続ける「宇宙ビジネス銘柄」とは今年はアポロ11号が人類史上初めて月に降り立ってから50年。宇宙ビジネスに携わる注目企業は、日本でも少なくなくなった(写真はイメージです)Photo:PIXTA

ZOZO前社長が「スペースX」に
一気に拡大した宇宙ビジネス

 秋が静かにやってきました。虫の音を聞きながら、ひとりお月さまを見上げる機会が増えています。今年はアポロ11号が人類史上初めて月に降り立ってから50年。近くて遠い月の世界が、最近は急に身近なものに感じられるようになりました。

 イーロン・マスク氏率いる宇宙ベンチャー「スペースX」は昨年、2023年に月への周回旅行を計画していることを、民間企業として初めて発表しました。月への有人旅行は、1972年のアポロ17号以来です。「スペースX」の乗客第1号には、ZOZO前社長の前澤友作氏が搭乗することも発表されました。前澤氏は夢の実現のためにZOZOをヤフーに売却し、社長を退任したということです。

 スペースXは、1万1000基の人口衛星を打ち上げる許可を得ていると報じられています。アマゾン・ドット・コムの創業者兼CEOのジェフ・ベゾズ氏が設立した「ブルー・オリジン」も、向こう数年間で数千基の人工衛星を地球周回軌道に乗せる事業を計画しています。

 地球を回る衛星の数は2000基に過ぎませんので、今から数年間で宇宙に関わるマーケットが急拡大する様がうかがえます。2011年以降、周回軌道に乗った衛星の数はほぼ2倍になったとされています。

宇宙ビジネス拡大の背景
打ち上げコストの急低下

 宇宙ビジネスがこれほど急成長している背景には、1つは衛星やロケットを打ち上げるコストが急速に低下していることがあります。エレクトロニクスの進化によって、人口衛星は以前よりもはるかに安くつくれるようになりました。今では10センチメートル四方の衛星もあります。小さく軽く、性能も飛躍的に向上しています。

 通常、静止衛星を造るには1基で300億円くらいかかります。ジャンボジェットの建造コストが1機100億円であることと比較しても、衛星はかなりの高額になります。しかも、宇宙空間には強烈な放射線や温度差があるため、半導体や太陽電池パネルの損傷も大きく、耐用年数は10年くらいです。つまり、1年間で30億円以上の利益を生まないと、民間ベースでは収支に合わないことになります。

 現在は、分析用の衛星写真や気象データの需要が高まっており、売れ筋の静止衛星であればなんとかコスト上はクリアできますが、これが宇宙探査機のような1点ものになると、そのコストは数百億~数千億円に達します。民間ベースではやはり厳しいことになります。