悪質商法の手口は、磨き抜かれたセールスの手法と同じ、と西田氏は指摘する。

「心理学者のロバート・B・チャルディーニは、<返報性><一貫性><社会的証明><好意性><権威性>など、説得のプロが活用する法則をいくつか掲げています。実際、業者のトークを聞いてみると、ごく優秀なセールスマンと同じことを言っている。『あなたのためを思って言うんですよ』『口コミサイトでも評判です』『あの○○さんもやっていました』などなど。複数の法則を巧みに組み合わせて攻めれば、世慣れていない若者などイチコロです」

 相手の信用を勝ち取る“コールド・リーディング”という話術も悪質業者ならばお手のものだ。服装や表情、雰囲気などから相手の状況を推測しつつ、誰にでも当てはまりそうなことを言う。いろいろ話すうち、1つ2つ当たるものがあると、『この人は自分のことをわかってくれる、すごい』とうれしくなり、「そのとおりです、実は…」などと自らペラペラ情報を喋ってしまう。

「さらに恐ろしいのは、あらかじめ入手した個人情報を利用する“ホット・リーディング”。SNSを使っていれば、プライベートな情報はダダ漏れも同然。マルチ商法の場合は、友人から友人へと情報が漏れ伝わっていることも多い。悪質な業者であれば、違法に入手したデータベースや探偵を利用することもあります」

 だまされる若者が増えている背景には長引く経済不安もある、と西田氏。

「“老後2000万円問題”がニュースになるなど、国や社会に対する不安材料は日々増えている。格差も定着しています。何を信じていいかわからず、未来に希望を抱けない若者は地下鉄サリン事件が起きた頃よりもっと多いはず。悪質商法の業者や詐欺師が語る“夢”にすがりたくなるのも、無理はないかもしれません。しかし、だからこそ思考停止状態で他人に依存するのでなく、自分の頭で考え、判断する力を身につけるべきでは。もちろん若者だけでなく、日本人全員にいえることですが」

 2022年、民法改正により成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられれば、親の同意を得ずに契約できる若者がさらに増える。息子娘の自立心と判断力を早くから養っておきたい。

(フリーライター さとうあつこ)