結婚、出産を切望していた36歳の女性は、婚約解消のショックから15年勤めている会社にも通えなくなりました(写真はイメージです)

「お父さん、実は…紹介したい人がいるの」

 娘を持つ父親としては、娘からそんなふうに告げられるのは何とも複雑な心境でしょう。今回紹介する村田秀彦さん(58歳)が娘の恵さん(36歳)から婚約者の存在を知らされたのは10月下旬のこと。

 そして挨拶の当日、恵さんは彼を実家に連れてくると2人は簡単な挨拶を済ませた後、彼の方から「来年1月、入籍したいと思っています」と切り出してきたそうです。「今は金がないから式を挙げることはできそうもありません。でも少しでも稼ぐことができるよう転職や副業を考えているんです!」

 初顔合わせの席で「低所得、貯金なし」という残念な事情を堂々とカミングアウトしてきたのだから、秀彦さんが「どういう神経をしているのか」と首をかしげるのも無理はありませんし、「大事な娘をお金で困らせたりはしないか」と心配するのはもっともなこと。秀彦さんの彼への第一印象はあまり良くありませんでした。後の展開を考えれば、秀彦さんの第一印象は正しいものでした。

 とはいえ今時、子の結婚に反対するような親は少数派で、多数派は娘の気持ちを尊重するでしょう。だから、娘が選んだ相手なのだから親も彼のことを信じたいという先入観が働くのは当然のことで、彼への評価が甘めになるのもやむを得ないところ。当の秀彦さんも最終的には「娘のため」を思い、2人の結婚に渋々、OKしたそうです。

 2人は年明けには「夫婦」になることが確実だと思われたのですが、事は予定通りに進みませんでした。彼にはどうしても「入籍できない理由」があったのです。

2人の出会いは有料婚活サイト
結婚、出産を切望していた娘の相手は…

 2人の出会いは有料婚活サイトでした。サイト上では利用者が年齢や年収、貯蓄額などを登録し、相手のプロフィールが気に入ったらアプローチをし、やり取りが始まるという流れです。大多数の婚活サイトでは女性は無料ですが、恵さんはすでに36歳。結婚、妊娠、出産を望むにはぎりぎりの年齢で一秒でも早く相手を見つけたい!それなら無料より有料の方がライバルの女性は少ないはずと、多少の利用料も厭わなかったのでしょう。

 一方の彼のサイト上のプロフィールは、調布市在住の34歳。救急救命士の有資格者で消防官として救急隊に所属。しかし、プロフィールに重大な嘘がありました。本当は「既婚」だったのです。

「独身証明書」の提出を求めない運営会社も悪いのですが、もっと悪いのは嘘をついた彼の方です。彼の家庭はいわゆる「小遣い制」で、彼は妻に給料を丸ごと渡し、妻から毎月3万円の小遣いをもらうという弱い立場。3万円の小遣いを使い切ってしまえば手元には何も残らず、それでも足りなければアルバイトをするしかないという有様でした。