新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ウェブ会議を行う場面が増えた。しかし、議論が盛り上がらなかったり、発言者が偏ってしまったりといった弊害も多くの職場で見られるようになってきた。そうした課題をどう解決していけばよいのか、プロファシリテーターの園部浩司氏が解説する。
気まずい、話が弾まない……
噴出するウェブ会議での問題点
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークを導入して、ウェブ会議を行う企業も増えてきました。生産性が高まるという声がある一方で、あちこちから「ウェブ会議では活発な議論が生まれにくい」「コミュニケーションがうまくいかない」「なかなか結論が出ない」といった愚痴やぼやきも聞こえてきます。
私は、日本でも数少ないプロファシリテーターとして大小さまざまな企業の会議を進行する一方で、企業内で会議を担当するリーダーたちにファシリテーションの指導を行っています。本稿では、そうした経歴を持つ私が、急増するウェブ会議がなぜ盛り上がらないのかを解説します。
ある電機メーカーA社では、今年の新型コロナウイルス流行により、従来出勤していた社員の50%以上のテレワーク化を推進することになりました。そのため、人事担当者のBさんは、新入社員研修の開催方法について、大幅な見直しを迫られることになってしまいました。開催する場合には広い会場への変更、アルコール消毒やフェースシールドの準備、備品類の除菌、参加者の検温といった感染防止対策、プログラムの見直し、最悪中止にする場合の代替策の検討など、議論すべきことが山積していました。
そこでBさんは人事部メンバーを集め、「新入社員研修:対策会議」をオンラインで行うことにしました。ところが、もともとリアルの会議でも発言が得意でないメンバーが多かったためか、オンラインでは意見がなかなか出てきません。Bさんが質問を投げかけても誰も意見を言わないので、気まずい沈黙が流れます。一応、画面に向かって笑顔を向けてくれているメンバーに当てて何かしらの発言があっても、次につながらず、議論どころか話すらはずみません。そんな調子では、解決のためのアイデアも乏しく、どこまで対策すればよいかの結論も出ず、Bさんは開催日が迫り、焦るばかりでした。
さまざまな仕事相手とのウェブ会議が増えている今、こうした状況は、多くのビジネスパーソンが経験していると思います。それでは、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。