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インキュベーションの虚と実

大学は起業家に必要なものが揃うスゴい土壌だ!
自分次第で新たな展開が実現する正しい大学の使い方

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第11回】 2012年9月24日
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 その望月教授から、「そろそろ大学に来るかい」と言われ、昨年、多摩大MBAプログラムの門を叩くことになった。これまでの事業に留まらず、新しいことに取り組むための決断をしたという。

 びっくりしたのは、柳生氏の周囲の人たちだ。「いまさらどうしたの?」と訝しがる人もいたが、今では、次々と新たな取り組みをして事業を育てる姿もあって、期待を持つ人が増えているそうだ。

 ちなみに、筆者の授業でゲスト講師を招いて講義をする回は、多摩大学の他の学生や「実践アントレプレナーシップ」の卒業生にも開放している。(昨年度受講済みだが二年生の今年度も)顔を出す数少ないメンバーの一人が柳生氏である。他にも、面白いと思ったら単位に関係なく授業に参加する姿勢は、若い人にも見習ってほしいものだ。

 自分が実践してきたことを理論で整理できる学問のよさとともに、「想いを周りに伝えると人が寄ってくる、ふさわしい人が出てくる」という場としての大学の魅力がある。柳生氏は、「多くの人は、シニアで大学とか言うと、意味がないと思っているが、正反対。実践ですぐ役に立つ」と言う。

 どうすれば柳生氏のように新たなプロジェクトを創造できるのか。

 柳生氏は、「素直に取り組めばいい。よく人はこりかたまってる部分があるが、ハダカでオープンになること」と指摘する。行動力が素晴らしい柳生氏だが、ごく自然に動いているという。かえって戦略的というか利益・目的追求の心があると、うまくいかないことが多いそうだ。

 また、多摩大だけでなく、近畿大とオリーブ鮑(※)、香川大とオリーブの木の根の菌について共同研究をしている。どうしてそんなに大学に縁があるのかとの問いに柳生氏は、「同じ業界の人で集まっていても面白くない、大学は色んな人がいて楽しい」と言う。どこかのベンチャー関係者にも聞かせたい言葉だ。

 柳生氏の例から、「待っていてもダメ」だが、「自ら動きを起こすと実に様々な利用価値が大学にはある」ということが分かる。働きながら夜学でMBAを取るには努力が必要だが、授業料がペイするかといった次元ではないメリットを享受することができる。それは自分次第だ。謙虚な姿勢で、柳生氏の言葉を借りれば、ハダカでオープンな姿勢で、大学のリソースを利用し、吸収することだ。それには教授や学生など接した人に想いを伝えることが大切だ。

(※)オリーブ果実の絞りカスとオリーブの葉を練りこんだ餌で鮑を養殖する。こうして飼育された鮑はポリフェノールを多く含み、酸化しにくい肉質になると期待されている。同様に「オリーブハマチ」や「オリーブ牛」なども研究が進んでいると言われている。

京都大学ゆかりの縁が発展して止まない
もとの形を破って広がる超交流会

 大学は人材輩出所であり、人のネットワークが大学の財産だと言われることは多い。だが、本当に人のつながりを活用し発展させている例は多くはない。同窓会も閉じた世界でマンネリ化しがちだ。

 そんな中で突出しているのが「超交流会」。京都大学大学院情報学研究科同窓会(以下、京大情報学同窓会)が主催している。超交流会のおかげで、筆者は京都を訪れることが増えた。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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