「私立大学生の8~9人に1人が大学を中退している」という衝撃的なデータ等を挙げながら、若者の社会的弱者への転落を防ぐために、大学・短大・専門学校と協働して中退予防活動を行うNPO法人NEWVERYの山本繁理事長。同氏は「大学が変われば日本の教育が変わる」と言い切り、大学変革こそ日本の教育改革にとって重要と考えている。なぜ大学を変革すれば、日本の教育を変えることが可能なのだろうか。また、どう大学を変えれば、日本の教育はよい方向へと向かっていくのだろうか。

こうすれば大学は面白くなる!
日本の大学教育が抱える3つの課題

石黒 前編では、日本の大学を中退する若者が激増する実態と、その背景にある大学の問題点を教えていただきました。では、これから日本の大学はどう変われば、中退率を低下させることができると思われますか?

やまもと・しげる/NPO法人NEWVERY理事長。1978年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。2002年に若者支援NPO法人「NEWVERY」の前身となる団体を設立。現在、理事長。「日本中退予防研究所」所長。「トキワ荘プロジェクト」代表。 NEC社会起業塾第5期生。著者に『人を助けて仕事を創る 社会起業家の教科書』(TOブックス)、『中退白書2010 高等教育機関からの中退』(NEWVERY)などがある。2012年7月から文部科学省高等教育局専門調査員を兼務。
NPO法人NEWVERY
Photo by Toshiaki Usami

山本 これから日本の大学は「3つの課題」をクリアする必要があると考えています。

 まず1つ目が、「カリキュラム」です。何をどの順番で教えれば学生の成長が最大化するのかという教育カリキュラムこそ、大学での戦略に位置づけられますが、今の多くの大学のカリキュラムは単に学問的体系を積み上げているだけです。

 ですが、これからは学問的体系を積み重ねてカリキュラムをつくるのではなく、どれだけ学生たちが夢中になって各学問を勉強して定着させるかが重要でしょう。例えば、大学1、2年生のときにどれだけ実践に近い経験をして、体験後に理論を学ぶ形にどう転換できるか。マーケティングの実践をしたことのない人間に、マーケティング理論を教えても普通はピンときません。そういう戦略をこれまで考えてこなかったことが日本の大学教育の問題です。

 2つ目の課題は、戦略の実行です。つまり、先生方の「教え方」のことで、教育機関では、教える内容以上に教え方が重要です。教える内容が高度かどうかは学生の能力に左右されますが、同じレベルの学生をいかに成長させられるかどうかは教え方に大きく影響されます。しかし、今まで日本の大学の多くは、教え方に対してほとんど投資や工夫をしてきませんでした。ですからこれからは、戦略と実行、カリキュラムと教員のティーチティングメソッドの開発が、非常に重要なテーマです。

 そしてもう1つ重要なことは、学生たちにどんどんアメリカの大学並みに「強い負荷」をかけた方がいい、ということです。そして同時に、負荷に耐えられる学習環境をつくるべきでしょう。

 この3つがすべて遅れている日本の大学では、大学が楽すぎて、学生がやる気をなくしています。学生にこれ以上負荷をかけたらさらに退学率が上がるとおっしゃる方もいらっしゃいますが、私は今の大学の状況では逆だと思います。いかに優れたカリキュラムの上で、教えるのがうまい先生が学生に対峙し、彼らを鼓舞しながら上手に強い負荷をかけて能力を伸ばす教育に変えられるか。それが退学率を下げる最も有効な方法です。