本稿では、アントレプレナーシップ(企業家精神、企業家活動)という視点から日本の現状を概観し、グローバルリーダーとして活躍できる戦略的企業家(Strategic Entrepreneur)の養成が喫緊の課題であることを指摘する。

 また、こうした戦略的企業家の育成において今後大学が果たすべき役割は大きく、日本においてアントレプレナーシップ教育を充実させる必要性があることを指摘する。いくつかの国際調査の分析結果を紹介しながら、日本のアントレプレナーシップの現状を見ることから始めることにしよう。まずは、この深刻な現状を真摯に受け止める必要がある。

忽那憲治(くつな けんじ)/神戸大学大学院経営学研究科教授 1989年大阪市立大学商学部卒業。1994年大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程を修了。『IPO市場の価格形成』中央経済社、『中小企業が再生できる8つのノウハウ』朝日新聞出版、『ベンチャーキャピタルによる新産業創造』中央経済社、『ハイテク産業を創る地域エコシステム』有斐閣、など著書多数。

深刻な状況にある日本の
アントレプレナーシップ

 スイスのビジネススクールIMDが、毎年発表する国の国際競争力ランキングを、新聞報道で目にした人も多いと思う。日本は調査対象59ヵ国中で1993年までは第1位の位置を占めていたが、その後徐々に低下し始め、2011年時点でのランキングは26位、2012年時点では27位である。残念ながら、もはや国際競争力がある国とは、世界から見られていないのが現実である。

 こうした国際競争力低下の主要因として同調査で指摘されているのが、アントレプレナーシップ(2011年時点:59位で最下位、2012年時点:54位)、柔軟性・順応性(2011年時点:54位、2012年時点50位)、中小・中堅企業(2011年時点:54位、2012年時点:39位)である。企業家精神、環境の変化に対応する柔軟性・順応性、中小・中堅企業の成長性に欠けているというのが、日本に対する世界の評価である。