――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJエグゼクティブ・ワシントン・エディター
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今回の選挙で大統領や議員に選ばれた政治指導者には、数多くの重要な仕事が待ち受けている。だが、ここにきてやるべき仕事のリストにはこれも加わった。「米国の民主主義に対する信頼を取り戻す」ことだ。
実のところ、今回の選挙は過去20年にわたる民主主義の基礎に対する信頼低下が、まさにその極みに達したかのようだ。こうした流れは、物議を醸した2000年の米大統領選でのフロリダ州の票再集計から始まり、4年前には外国政府による選挙干渉にも拡大した。
ドナルド・トランプ米大統領と支持者らは、今回の選挙で不正が横行したとして、法廷闘争に乗り出している。だが、これまでのところ、トランプ氏らが訴える不正疑惑を裏付けるものはなく、全米の州で投票の公正さに疑問を投げかけている。
一方、民主党内では自党候補であるジョー・バイデン前副大統領が当選を確実にしたにもかかわらず、米国民が最終的に次期大統領を選出する「選挙人制度」そのものについて、根本的に反民主主義的だとの主張を強めている。一般投票で多数の票を獲得した候補者が当選しない事態を招くためだ。また、人口の少ない州に不釣り合いな権限を付与することで、人口の多い州が犠牲になっているとして、上院も同様に反民主主義的だとの指摘さえ出ている。
そのすべてが、制度への多大な圧力となる。クリス・バン・ホーレン上院議員(民主党、メリーランド州)は「われわれの基本的な制度の一部が信頼の危機に見舞われている」と指摘する。次期大統領と新議会のメンバーにとっては、疑念がさらに深まるのを放置するのではなく、米国民そして同様に世界の不安を払しょくする手だてを模索する時だろう。