・もっと効率的に資産を増やせないか?
・会社の財務をもっとうまく管理できないか?
・画期的で新しいアイデアやテクノロジーを生み出して儲けられないか?
不安定さを増す世界で、私たちは好むと好まざるとにかかわらず、日々そんなことを考えざるを得なくなっています。お金で愛や幸せは買えないとはよく言ったものだけれど、お金がなければその先に貧困や満たされない人生が待ち受けているのもまた事実だからです。
16歳でケンブリッジ大学に進んだという逸話を持つアマチュア天才数学者、ヒュー・バーカーは、新著『億万長者だけが知っている教養としての数学』の中で、そんな世知辛い世の中で一際役に立つものこそが「数学」だといいます。「数学を使って儲ける」ためのあらゆる知恵を網羅した同書から、とっておきのトピックを紹介しましょう。

億万長者だけが知っている教養としての数学Photo: Adobe Stock

データに耳を傾けよ(どれだけそれが退屈だとしても)

 事実は時に退屈だ。たとえば、不動産を保有して賃貸したり、インデックス・ファンドに投資したりすることの長期的な価値は? その計算は聞いていてあまり心躍るようなものではないけれど、こうした市場の長期的で揺るぎない値上がり傾向に耳を傾けている人々の多くが、成功をつかんできた。

 不動産投資家のキャンディ兄弟の物語はその好例だ。ふたりは1995年にロンドンの不動産で初めて6000ポンドのローンを組み、そのたった14年後、3億3000万ポンドものポートフォリオを保有して、『サンデー・タイムズ』の長者番付入りを果たした。当然、運やタイミングの果たす役割も無視できない。1995年といえば、不動産価格はまだ長期的な平均を下回っていたが、その後、記録的な上昇を続けることになる。一方、1986年から1991年にかけてのバブル期の日本や、近年の不動産バブル崩壊前のアイルランドで不動産を購入していたら、はるかに壊滅的な結果が待ち受けていただろう。

 ウォーレン・バフェットのもっとも成功した投資の多くは、平凡すぎるくらい平凡だ。それは、彼が入念なリサーチをし、数字や事実を見て、それを信頼しているからだ。同じことがビジネスでもしばしば成り立つ。企業にとってもまた、最善の戦略は時としてものすごく平凡だ。自社の得意とする中核業務をコツコツと続けるに越したことはないのだ。その業務の成果が時間とともにどう変化してきたかを数学的に理解すれば、その業務が長期的に実行可能なのか、それとも全面的な見直しが必要なのかがわかるだろう。そして、ランダム性やリスクを理解すれば、今採用しようとしている戦略が正しい賭けなのか、誤った賭けなのかを見極めやすくなる。