・もっと効率的に資産を増やせないか?
・会社の財務をもっとうまく管理できないか?
・画期的で新しいアイデアやテクノロジーを生み出して儲けられないか?
不安定さを増す世界で、私たちは好むと好まざるとにかかわらず、日々そんなことを考えざるを得なくなっています。お金で愛や幸せは買えないとはよく言ったものだけれど、お金がなければその先に貧困や満たされない人生が待ち受けているのもまた事実だからです。
16歳でケンブリッジ大学に進んだという逸話を持つアマチュア天才数学者、ヒュー・バーカーは、新著『億万長者だけが知っている教養としての数学』の中で、そんな世知辛い世の中で一際役に立つものこそが「数学」だといいます。「数学を使って儲ける」ためのあらゆる知恵を網羅した同書から、とっておきのトピックを紹介しましょう。
ビザンチン将軍問題とビットコイン
いろんな種類のデジタル通貨が21世紀の世界経済に欠かせない一部となりつつある。ゲームやソーシャル・ネットワークのユーザーなど、特定のオンライン・コミュニティの内部だけで使える仮想通貨から、暗号を使って取引を安全なものにする暗号通貨まで、その範囲は広い。ライバルがどんどん増えているとはいえ、2009年に史上初となる安全な分散型暗号通貨を生み出したのがビットコインだ。ビットコインの開発者たちは、楕円曲線暗号を用いただけでなく、ビザンチン将軍問題というかなり厄介な数学的難問について考察することでそれを成し遂げた。
ビザンチン将軍問題とはこうだ。数人の司令官を率いる将軍がいる。包囲中の城への攻撃を成功させるためには、将軍は使者を通じて攻撃か撤退の命令を出さなくてはならない。ところが、司令官と使者のなかには、まちがった命令を出す裏切り者が何人か潜んでいる。まちがった命令を受け取ると、部隊は連携が乱れて敗北してしまう恐れがある。
この問題を解決するひとつの方法は、全司令官が自分以外の司令官に使者を送り、全司令官が自分以外の司令官からまったく同じメッセージを受け取るまで、誰も行動しないようにするというものだ。そうすれば、裏切り者が偽の命令を中継することはありえない(図28を参照)。