アルミニウム生産の「脱炭素化」で
中国からの供給は鈍化?

 その中国は今、温室効果ガスの排出量が大きなアルミニウム、鉄鋼産業の脱炭素を進めようとしている。

 環境基準に達していない工場の稼働を許可しない方針を示しており、公式な減産指示は出ていないものの、市場関係者の間では、内モンゴル自治区のアルミニウム生産が制限されるとの噂が流れている。

 内モンゴル自治区で減産があったとしても、中国全体のアルミニウムの供給に深刻な影響を及ぼす規模ではないが、中国政府がアルミニウム生産の「脱炭素化」を進める可能性があることに、市場は大きく反応しているとみられる。

 今後、中国の供給の伸びは鈍化していくと考えるのが妥当だろう。

 では、いきなり温室効果ガスの排出が少ない再生可能エネルギーや原子力に電源が移るかといえば、前者は発電効率や燃料確保の問題から、後者は環境面やテロ、武力衝突などのリスクの問題から、思い通りに生産能力を増やすことが難しい。

 より現実的な解として天然ガスから作られた電力を用いる、あるいは化石燃料を用いて生産したアルミニウムに関しては炭素税が賦課される、ないしは、温室効果ガスの排出枠を購入するといった選択をせざるを得なくなるとみられる。

 天然ガスを活用してアルミニウム生産を行う場合、かつて米国から中国に主要生産地が移ったように、今度は中国から、産ガス国である中東にシフトすると予想される。

 ただでさえ、民族や宗教的な対立が激しい中東がアルミニウムの主要生産地になれば、供給が不安定化するリスクが高まる。

 そのため、直近の欧州の排出枠取引を用いて生産の脱炭素化を行う場合は、どうだろうか。

 現時点では、炭素排出枠1トン当たり70ドル程度で取引されているため、アルミニウムの二酸化炭素排出原単位がアルミニウム新地金(新塊)1トン当たり9.24トンを踏まえると、これを全てアルミニウム生産者が排出枠のコストを負担した場合、価格ベースでは1トン当たり650ドル近いコストアップとなる。

 まとめると、脱炭素の流れが加速すれば、アルミニウムの供給不安と価格上昇につながる可能性があるのだ。

次のページ

資源価格の変動リスクを制御せよ

TOP