トランプ関税でも止まらない米国の対外純負債の膨張、高まる「ドル下落」調整リスクPhoto:PIXTA

トランプ政権は関税引き上げで貿易赤字の縮小を狙ってきたが、米国の経常赤字と対外純負債の膨張には歯止めがかかっていない。しかも近年は、所得収支黒字の消失とキャピタル・ゲインの消滅という従来の「米国の優位性」も揺らいでいる。対外不均衡の構造変化を踏まえ、中長期的なドル調整リスクを考える。(龍谷大学経済学部名誉教授 竹中正治)

トランプ政権下でも止まらない
米国の対外純負債の膨張

 トランプ政権は長きにわたる米国の貿易収支赤字の継続に強い不満を表明してきた。この点について同大統領の語る「米国の貿易収支赤字は米国の損失であり、相手国のもうけだ」という認識は、近代的な経済学が成り立つ以前の重商主義時代の発想であり、経済学的には全くのナンセンスだ。

 しかしながら貿易、経常収支赤字の長期にわたる結果として米国の対外純負債(対外資産と負債の差額)が対GDP(国内総生産)比率で拡大・発散過程をたどっていることについては、これまで多くの経済学者が「長期的に持続不可能」と警鐘を唱えてきた。それでも、結果として長期にわたって持続してきた。

 トランプ政権による昨年来の輸入関税の大幅な引き上げにもかかわらず、貿易収支赤字、並びに経常収支赤字に見る米国の対外的な不均衡と対外純負債の膨張トレンドに変化の兆しは見られない。

 それどころか、過去10年ほど米国の対外不均衡問題には、以前存在していたような「米国の優位性」が掘り崩されるような変化が生じている。次ページでは、その結果、長期的にはドル相場の下落を伴うなんらかの調整局面を迎える可能性が次第に高まっていることを説明しよう。