日本の世帯所得「格差拡大」はミスリード?厚労省の最新調査が示す所得と資産の格差を巡る真実Photo:PIXTA

日本の所得格差はこの30年で拡大したという通説に対し、厚労省「所得再分配調査報告書」を基に検証すると、税・社会保障の調整と世帯人数補正を行う「等価再分配所得」では格差はほぼ拡大していない。増加したのは高齢者世帯の比率という構造要因だ。一方で相対的貧困率や資産格差には別の動きも見える。(龍谷大学名誉教授 竹中正治)

所得格差の通説を
データで検証する

 21世紀が始まってちょうど四半世紀が過ぎた。過去25年、あるいは30年間にわたって日本の世帯所得の格差は拡大しているかと問えば、おそらく多くの人が「拡大している」と答えるだろう。

「そう思う理由は?」と問えば、例えば「正規雇用に比べて賃金が安い非正規雇用が増えた」というような事実が挙げられるだろう。確かにメディアを見れば、そんな記事に溢れている。

 この点で非常に重要な情報を提供してくれるのが、厚生労働省の「所得再分配調査報告書」であり、原則3年に1度の調査結果が公開されている。最新版が昨年12月に公開されたので、まずその結果をご紹介しよう。

 結論を先に言うと、社会保障の負担と給付、税金などを調整し、さらに世帯人数の違いを調整した「等価再分配所得」で見ると、日本の世帯所得格差は過去30年間ほとんど拡大していないのだ。

 次ページでは、「所得再分配調査報告書」の内容を紹介しつつ、所得と資産の格差の実態を検証する。