日本銀行は9月の金融政策決定会合で、保有する上場投資信託(ETF)の売却開始を決めた。ニッセイ基礎研究所の試算によれば、日銀が保有するETFの時価総額は85.7兆円で、含み益は48.5兆円だ(9月19日時点)。日銀が株式を10%以上間接保有するのは71社に及ぶ。日銀はETFの売却について「100年以上かかる」としており、こうした企業の“大株主”に日銀は君臨し続けることになる。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「100年以上かけて売っていく」
保有ETFは85.7兆円、含み益48.5兆円

「淡々と100年以上かけて売っていく」――。

 9月19日、日本銀行の植田和男総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で、ETFの売却計画についてこう述べた。

 利上げ見送りが規定路線で“無風”と目されていた決定会合で、ETF売却というサプライズの決断がなされたことに市場は動揺。発表直後に日経平均株価は急落した。

 ただし、日銀が発表した「簿価で年間3300億円程度」という売却ペースは、東証プライム市場の1日の売買代金が5兆~6兆円程度であることと比べれば株価への影響は小さい。とはいえ、単純計算で100年以上かかる売却計画は現実味に欠ける。

 市場が疑心暗鬼となるなか、植田総裁が冒頭の発言のほかにも、「100年後、われわれはいないわけですけれども」などとも述べて、わざわざ100年を強調したのは、市場の動揺を抑える狙いがあったのだろう。

 ただそれ以上に、「量的・質的金融緩和」の一環で打ち出したETF購入という日銀の政策の異様さと後始末の困難さを際立たせる象徴的な光景だった。

 日銀が購入したETFは日本株市場の活況を反映して、保有総額と含み益共に過去最高となっている。ニッセイ基礎研究所の試算によれば、日銀が保有する保有するETFの時価総額は85.7兆円で、含み益は48.5兆円だ(9月19日時点)。

 日銀がETF購入を通じて株式を間接保有し、「大株主」となっている企業はどこなのか。