加えてネットやスマホの急速な発展と普及により、世の中を飛び交う情報量が爆発的に増えていっています。そのせいで人の脳と心は、有象無象の情報にかく乱されて疲労こんぱいです。

 物質的にも同じ現象が起こっています。日常的に使う道具も、毎日摂取する食べ物も、どんどんその種類が増えています。

 さらには対人関係においても同様です。

 SNSが急速に普及することによって何千人もの人と交流できるようになりましたが、その分、非常に多くの時間とエネルギーを数多くの人とのやりとりに消費しなくてはならなくなりました。

 こうしていまや何もかもが増えすぎてしまって、心身は悲鳴をあげています。そしてこのことは、うつや不安、不眠、原因不明の体調不良など、心身の問題を抱える人が急増していることと、けっして無縁ではないと考えられています。

 このように現代人のメンタルヘルスが悪化している問題に対して、私は、薬だけでは根本的な解決はできないと実感しています。

 もちろん、病状によっては薬物療法が非常に大きな助けとなることは疑いようがありません。しかしそれだけで、現代人特有の心身の疲れや不調にすべて対応できるとは思えないのです。

 その現状を改善するには、「心のなかを埋め尽くすくらいに増えすぎたものを減らす」必要があります。

 そして、そのための一つの手法が、「マインドフルネス」なのです。

「マインドフルネス」は
坐禅から着想を得た治療法

 医学の分野では、米マサチューセッツ大学医学大学院のジョン・カバットジン博士が最初に坐禅に着目しました。1970年代のことです。

 博士は若いころから禅僧に師事し、坐禅を実践されてきた経験から、「坐禅は痛みの治療に効くかもしれない」と着想を得ました。