精神科医で禅僧の川野泰周氏の新著『半分、減らす。』からの一部抜粋で、生活すべてにおいて1/2を心がける「シンプル生活術」を指南する。今回のテーマは「スマホの使用時間を半分に減らす」。体と心、そして人間関係のために、スマホを一日中見続ける生活習慣を変えてみよう、という提案だ。
30年前の渋谷の若者は皆、
顔の角度が前を向いていた
最近、ある写真家の方のウェブサイトで1990年ごろに撮影された渋谷駅のハチ公前の写真を見つけました。いまと変わらずたくさんの若い人たちが待ち合わせをしたり、談笑したりしてにぎやかな光景なのですが、私はそれを見て小さな違和感を覚えました。
そこでラジオ収録のためにNHKに向かう道すがら、ハチ公前に立ち寄ってみたところ、その違和感の理由がはっきりとわかりました。そこにいる人々の、「顔の角度」がまったく違うのです。
いまのハチ公前では、誰もが下を向いてスマホを見ています。ところが1990年のハチ公前では、誰もが前を向いていたのです。幾人かいる下を向いた人も、スマホではなく本や雑誌を読んでいました。
たった30年の間に、私たち人間の「姿勢」が大きくゆがめられてしまったことがわかります。
それと同時に、スマホをはじめとするモバイル端末の普及によって、世の中の情報量は爆発的に増えました。四六時中、私たちは情報の渦のなかで暮らしています。電車に乗っている間、ほとんどの人がスマホを見て過ごすのが当たり前の光景になりました。